三密よりも三毒がこわい
この掲示板で、「輝け!お寺の掲示板大賞2020」という企画があるそうです。
これが本になったのが『お寺の掲示板』でした。
昨年小欄でも紹介したことがあります。
今年の大賞は、熊本県の浄土真宗本願寺派明導寺の作品
「コロナよりも怖いのは人間だった (神奈川県ドラッグストア店員)」
が選ばれたそうなのです。
その通りかもしれません。
不寛容の話題にふれた時にも書きましたが、人間の自分中心な思いによって差別をして、そこからはじまる攻撃的な行動は恐ろしいものです。
先日神戸の須磨寺に行った折に、同じ神戸市内にある宝満寺さんを訪ねました。
宝満寺さんは、昨年の秋にも、一遍上人の歌碑の除幕に訪れた寺でもあります。
またご住職はとても布教に熱心な和尚で、私も懇意にさせてもらっています。
須磨寺にお参りするのに、通り過ぎては申し訳ないと思って、お参りさせていただきました。
昨年序幕した歌碑は、山門に入ったところに変わることなくございました。
山門のところに掲示板があって、目にとまりました。
さすが、布教に熱心な和尚だけあって、丁寧な言葉が書かれていました。
三毒についてでした。
わかりやすく書かれていたので、書き写してきました。紹介します。
貪欲
わがまま、買い占め、高額転売
自分さえよければいい、なんて思ってませんか?
瞋恚
イライラ、差別、他者批判
あなたの言葉や行動が、他人を傷付けてませんか?
愚痴
思慮不足、疑心暗鬼、右往左往
怪しげな情報や無責任な噂に振り回されてませんか?
と三毒についてのわかりやすい説明が大きく書かれていました。
そのあとに、
大切なことを忘れてませんか?
と大きく書かれて、
更に
「コワいのは、コロナウィルスだけではありません、
人を傷つけ、社会を混乱させる原因は
実はわたくしたち一人ひとりの心の中にあるのです。
大切なのは「自分自身の心」を冷静に見つめてみること
足るを知ること、受け容れること、感謝すること
こんな時こそ、この世の中に少しでも苦しみを増やさぬよう
お互いに思いやり、助け合って暮らせたらいいですね」
と書かれていました。
親切で丁寧な掲示板で、思わず立ち止まり、感激しました。
「三密よりも三毒が怖い」と言っていた和尚さんもいました。
コロナよりもこわいのが人間、三密より恐ろしいのは三毒、げに恐ろしきはお互いの心、私の心なのであります。
そう思うと懺悔懺悔の心が湧いてきます。
三十日は、今年最後の布薩の日であります。
懺悔懺悔と礼拝を繰り返すのであります。
振り返ってみれば、コロナ、コロナで一年追われたように感じます。
それがまだ収まりそうにないのであります。
コロナのみならず、この世に生きる限りにおいて、何が起こるか分かりません。
そう思うと真民先生の詩を口ずさみます。
つゆのごとくに
いろいろのことありぬ
いろいろのめにあいぬ
これからもまた
いろいろのことあらん
いろいろのめにあわん
されどきょうよりは
かなしみも
くるしみも
きよめまろめて
ころころと
ころがしゆかん
さらさらと
おとしてゆかん
いものはの
つゆのごとくに
三毒にひっかかることのないように心したいものです。
横田南嶺