我れを非として当たる者は吾が師なり。
我れを是として当たる者は吾が友なり。
我れを諂諛(てんゆ)する者は吾が賊なり」
という言葉がございます。
『荀子』の中にある有名な言葉です。
意味は
「自分の欠点を指摘してくれる人はみな、自分にとって先生である。
自分の長所を指摘してくれる人はみな、自分にとって友達である。
自分に媚びへつらう者は自分にとって賊である」
というものです。
なかなか五十路の半ばを越えて来ますと、直接面と向かって欠点を指摘してくれる人に逢うのは少なくなってきました。
先日、小欄でもたびたび紹介してきた、佐々木奘堂さんにお越しいただいて、坐禅指導をしていただきました。
私も雲水たちに交じって、佐々木奘堂さんのご指導をいただきました。
佐々木奘堂さんは、ギリシャ彫刻のフィディアスの「ディオニソス像」を理想とされています。
腰を立てる、姿勢について常に探求し続けていらっしゃるこの道の大家であります。
もう数年来のご縁をいただいています。
初めてお目にかかった頃から、私に対して「腰が立っていない、姿勢が悪い」と手厳しくご指導いただいています。
自分の欠点を指摘して下さることは有り難いことだと思って、ずっとお世話になっています。
今回も雲水たちに指導いただいた後、控え室で、更に厳しくご指導を頂戴しました。
ご指導をいただいて、常に腰骨を立てるように意識しなければならないと改めて思いました。
初めのうちは、ディオニソス像のどこが良いのかよく分からなかったのですが、何度もご講義を拝聴するうちに、だんだんと分かってきたように思います。
それと共に自分の坐禅も一層余計な力が抜けてきたなと思っていたのですが、佐々木奘堂さんから見れば、まだまだなのです。
大慧禅師が、二六時中、いつ正念を失ったか、常に自ら点検せよと示されていますが、私も更に一層、いつ腰骨を立てる力を失ったか、自ら点検しなければと思います。
「永遠なるものを求めて永遠に努力する、その人を菩薩という」
努力精進は、無窮なのであります。
奘堂さんの熱意に見習って、一層の精進であります。
有り難いお示しでありました。
横田南嶺