今日の言葉
何のために生きるのか
期せずして、二人の方から同じ時期に『男はつらいよ50お帰り寅さん』を見て、良かったという話をうかがいました。
「ただいま このひと言のために 旅に出る」
という一言を添えたポスターを見たことがあります。
いい言葉だなと思っていました。
寅さんの映画は、何作かは見たことがありますが、何分にも長年修行道場にいますので、それほど関心があるわけではありません。
しかしながら、渥美清さんがお亡くなりになって二十四年も経つのに、こうして映画化されるのですから、いかに人気があるのかがよく分かります。
私が見た頃の満男くんは、まだ子供だったと思いました。映画では、すっかり大人になっているようです。
映画をご覧になったというある方は、
「人間はなんのために生きてんのかな?」
甥っ子に聞かれた寅さんは、難しいこと訊くなあと笑いながら、
「ああ、何というのかな、生まれてきて良かったと思う事が何べんかあるんじゃない、そのために生きてんじゃねえか」
「ふうん」「そのうちお前にもそういう時が来るよ!まあ頑張れ」
という言葉を紹介してくれました。
こういう言葉に、多くの人が共感するのでしょう。
何の為に生きるのか、
哲学的な答えよりも、こういう誰にでも分かり、誰にでもあることにこそ、真実があると思います。
時間があれば行って見てみたいと思いつつも、たぶん思うだけで終わってしまうことでしょう。
それでも、七草がゆの緑の湯気を感じるときなどは、ああ生きてて良かったなと思うのであります。
横田南嶺