寝る禅とイス坐禅
円覚寺でも子供向けの坐禅会が開催されます。
午後一時半から三時までの予定であります。
本日の午前中は、十時から大書院で御朱印を書かせていただきます。
少しお話でもしながら、御朱印を書いて差し上げたいと思っています。
五月の連休で御朱印を書くようにしたのは、ホトカミの吉田亮さんに教わったことであります。
私は禅語を選んでいただいてそれを書くようにしています。
四月の終わりの昭和の日には、寝る禅とイス坐禅を開催していました。
この二つを一緒に行うのは初めての試みでありました。
寝る禅も今まで何度か開催してきました。
毎回好評でありました。
イス坐禅はここ数年来の取り組みであります。
イス坐禅には常連の方が多いのであります。
毎回お越しくださる方のことを思って、毎回新たなワークを考えてきました。
しかし、毎回毎回、新しいことがでるわけでもありません。
また毎回何か新しいことをしなければと考えることも重荷になるので、そうこだわらないようにしています。
思いついたら何かを試してみるということで行ってきました。
今回についてはイス坐禅でも何度も行ってきましたし、寝る禅も回を重ねて方法もできあがってきたので、それを合わせて行えば、それでいいと思っていました。
ところが、その数日まえに、ゴムのボールを踏んでいて、新しいことを思いついたのでした。
早速修行僧達とともに試してみたところ、修行僧達にはとても好評でした。
これは良さそうだと思って、すぐに人数分のボールを用意して行ったのでした。
これをまず足を調えることに使ってみました。
足でこの柔らかいボールを踏むのです。
空気を一杯にいれているわけではないので、踏みつけることが簡単にできます。
ただあまり力をいれすぎるとバランスを崩します。
体のバランスを崩さないように、踏んでゆきます。
これだけでも足の裏の感覚が蘇ってきます。
それからボールを縦の方向にゆっくりと転がすようにして踏んでゆきます。
軽く踏んでいくということは変わりがないようにします。
左右も行います。
足の小指側の側面を畳に近づけるようにして、更に親指側の側面を畳に近づけるようにして足首を動かします。
その縦と横の方向を合わせると円の運動ができます。
これで不安定なゴムのボールを足の裏で捉えながら、足首をゆっくりと回すことができます。
坐って足首まわしもよく行ってきました。
足の指を回すのもいいものです。
それに対してこの動きは能動的なのです。
足首を回されるのではなく、不安定なゴムのボールを踏みながら、足の裏でそのボールを捉えながら、ゆっくりと工夫しながら足首を能動的に回すのです。
それをゆっくり行って立ってみると足の裏の感覚が全然違っています。
ホトカミの吉田亮さんが、noteに感想を書いてくれて、「グルグル動かし終えて、足を畳につけると、足の指の裏で畳の目を数えれそうなほど、足の裏に意識が向くようになりました。」と書いてくださっていますが、まさにその通りです。
立っていても歩いていても、イスに坐っても、この足の裏が一番の土台になるのです。
中学生の頃初めて目黒絶海老師に参禅して公案をいただいた時に、公案は頭で考えるのではなく、足の裏で考えろと言われたことをお伝えしました。
これはいったいどういうことなのか、分かるようになるには十年以上もかかりました。
頭で思考することは迷いを重ねることになります。
その頭の思考を止めるには足の裏の感覚に意識を向けるのがよいのです。
それでも足の裏でどう考えたらいいのだろうかと思考してしまいがちです。
その繰り返しで考えなくなります。
足の裏のワークを不安定なボールの上で足首を回しますので、全意識がその足の裏に向いて頭の方は思考が停止している状態になります。
その足のワークを行っただけで、そのあと前屈をしてもらうと、多くの方が一層深く前屈ができるようになっていました。
足首を動かそうとして、そして足指もボールを捉えながらいろんな方向に動かしていくので、足首から股関節や腰まで自然と動かされているのです。
それで柔らかくなっているのです。
そこから横になってもらって、仙骨の下にボールを置いて仙骨まわりをほぐしてゆきました。
テニスボールをよく使っていたのですが、今回のように直径二十センチほどのゴムの柔らかいボールを当てて行うと、とてもここちよくほぐれてゆきます。
仙骨から腰まわり、そして背中、肩甲骨のあたりと順番にほぐしてゆきます。
最後の首の下にボールを置いて首をほぐしておきます。
そうしておいて寝る禅の呼吸法を行いました。
膝を曲げながら息を吸って吐きながら足の向こうに壁があると思って足に力を入れて押し出すのです。
これで下腹部が充実します。
更にボールを丹田の上に置いて吐きながら、ボールを押し上げるようにしてお腹を膨らませて足を伸ばすというのを数回繰り返しました。
そのあとは何もせずに脱力して自然の呼吸に任せています。
これが至福のひとときとなります。
なにもしなくても自然と静かな息が起こってくるのです。
その自然な息をただ見つめて力を抜いています。
それからゆっくりと時間をかけて立ち上がってもらいます。
すると頭も空っぽ、上半身も力が抜けてどっしりと立つことができます。
もういつまでもこのまま立っていたいと思うほどです。
そこまでで一時間半が過ぎていました、
休憩を入れたのですが、皆さんお手洗いに向かうのも自然と良い姿勢のまま静かに歩いてくださっていました。
そのあと更に一時間少々みなさんとイス坐禅をしました。
これが私にとってもとてもよく坐れたと感じました。
時間の感覚も場所の感覚も消えてしまって空になった思いでありました。
お昼は皆さんにお弁当を召し上がっていただいて解散となりました。
皆さんがとても満足されていた表情となっていたのが印象的でありました。
初めて、寝る禅とイス坐禅とを両方行ったのでしたが、とても良かったと感じました。
横田南嶺