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臨済宗大本山 円覚寺

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2026.04.17
今日の言葉

本屋で坐禅

先日は朝早く京都に向かい、花園大学に参りました。

新入生たちへの授業であります。

いつもは禅とこころという講座で、前期三回、後期三回お話しています。

それともうひとつ花園大学は、禅を学ぶための学校から始まっており、建学の精神は「禅的仏教精神による人格の陶冶」となっています。

新入生は、基礎禅学を受講することになっています。

その第一回を私が担当させてもらっています。

禅を学ぶ学校であったといっても、今や仏教学部は一部であり、それ以外の学問をなさる方がはるかに多いのが実情であります。

新入生を前期と後期とに二回に分けて、私が講義をして、いちおう新入生皆に聞いてららうことになっています。

今回は、仏教学部だけでなく、日本史学科の学生や臨床心理学科や、今年から新しくできた初等教育学科の学生さん達が受講してくれました。

後期には、日本文学科、社会福祉学科の学生さん達に学んでもらうようになっています。

今年十九歳になる学生さんたちが多いと思います。

仏教や禅の話など初めて聞く学生さんも多いと思いました。

できる限り分かりやすく話すように心がけました。

聞き慣れない話だと思いましたが、皆さん飽きることなく聴いてくれて有り難く思いました。

はじめに宗教を嫌わないでほしいと話しました。

人類が今のように発達しているのには宗教は大きな役割を果たしています。

動物としてみればとても弱いものです。

熊などに太刀打ちできません。

虎やライオンにも勝てません、

そんな弱いホモサピエンスですが、ユヴァル・ノア・ハラリさんの『サピエンス全史』に書かれているように、貨幣、帝国と共に宗教という「実体を伴わない虚構」「共通の神話」を作り出したからこそ、お互いに協力し合おうという意識が生まれ、集団での行動や作業が可能となって今日のように発展してきているのです。

人間であるからには宗教は欠かせないものです。

ところが世の中には、宗教がもとになった戦争が起きています。

今も続いています。

また宗教によって不幸になった人もいます。

それで宗教は怖いと思うかもしれないのです。

ただ嫌うだけでは問題の解決にはなりません。

宗教がどのような役割を果たしてきたのか、どのような宗教が危ないのか、宗教がどのようにして争いを起こしてしまうのか、などをよく学んでおく必要があります。

そして信頼に足る宗教を見つけてほしいのです。

仏教や禅は少なくとも長い歴史の検証に堪えてきました。

禅は今も世界の人に関心を持たれています。

スティーブ・ジョブズや、日本の稲盛さんなど著名人で禅を学んだ人も多くございます。

もっと言えば禅は、日本の文化、歴史に大きな影響を与えています。

禅は特定の教祖や聖典をもたない特殊な宗教でありますが、そのかわり多くの個性的な人物を生み出しています。

その人物の言葉が残されています。

そして禅僧たちの歴史があります。

思想が生まれています。

文化も創り出しました。

それらをおおよそ学べるようになっている本が、このたび禅文化研究所で発行した『文字からはじめる禅』という本です。

このたび学生さんたちには、この本を差し上げました。

歴史に名を残した禅僧ってどんな人だろうか、どんな言葉があるのだろうかと思えば、この本で学ぶことができます。

有名な禅の寺というのはどんな寺だろうかと思えば、この本で調べられます。

禅の歴史も思想も学べます。

お部屋に置いて、折に触れて紐解いてほしいとお話したのでした。

それから馬祖禅師の言葉や臨済禅師の言葉を紹介しながら、禅の話をしたのでした。

終わってからすぐに新幹線に乗って東京に向かいました。

神田神保町にある三省堂書店がリニューアルされて、イス坐禅の講座を開いてくださったのでした。

久しぶりに三省堂に参りました。

学生の頃にはよく訪れたものでした。

今は本屋がなくなってしまうことが多いのですが、こうして立派になって続いていっているのは嬉しくなります。

新しくなっているので、とてもきれいになっています。

本屋に入るとワクワクするものです。

どんな本があるのか眺めるのは楽しいものです。

とても見やすく並べられています。

二階に行くと宗教書の棚もあります。

有り難いことに私の本もたくさん置いてくださっています。

私の般若心経の本と、イス坐禅の本が、表紙が見えるように置いてくれていました。

三階の一角で二十名ほどでイス坐禅を行いました。

カーテンひとつ仕切っただけで、その向こうにはお客さんがいるのです。

話し声ももれてきます。

まさに町の中での坐禅であります。

どんな風になるのかと心配しながら始めました。

始めるといつものように首や肩をほぐして、今回は手首も入念にほぐしました。

そして足の指で床を踏み、踵で踏むという運動を繰り返しました。

それから腰を立てて、頭から背骨がぶら下がっているようにして坐りました。

私自身朝早くから京都に出かけ、授業をしてその夕方ですが、身体を調えて坐るとすっかり疲れがとれてしまいました。

自分自身がなによりイス坐禅を深く味わうことができました。

そのあとイス坐禅の本にサインをして差し上げました。

署名をしながら感想をうかがうと、初めて体験された方もとても喜んでくれていました。

身体が楽になった、今も足がしっかり大地を踏んで立っている感じですなどと感想を述べてくれました。

こんな町の中の本屋でもじゅうぶんに坐禅が出来るのだと実感することができました。

 
横田南嶺

本屋で坐禅

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