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臨済宗大本山 円覚寺

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2024.03.08
今日の言葉

禅と発酵 – 其の一 –

禅寺ではもともと発酵食品をよく用いていました。

お味噌は大切な調味料であり、栄養源でもあります。

和歌山県由良町の興国寺開山法燈国師が、中国で修行して持ち帰ったと言われています。

お醤油もそうであります。

それから梅干しや沢庵漬けもまた発酵食品です。

十二月に厳しい修行の時期があって、その時に麹で作った甘酒も造りますが、これも発酵食品であります。

あまりに日常にありながら、そんなに意識してもいなかったのですが、発酵食品に関心を持って作るようになったのは、なんといっても栗生隆子さんとの出会いからでした。

栗生さんは、発酵生活研究家でいらっしゃいます。

著書もございます。

栗生さんとの対談動画もありますので、ご関心のある方はご覧ください。

栗生さんは十四歳の時に歯の治療をしてから体調不良が始まりました。

体の具合がどんどん悪くなっていったのですが、どんな医者にかかっても原因が分からないというのです。

下痢がひどくなっていきました。

原因が分からないので、下痢止めを飲むしかありません。

その薬も飲むのが癖になり、だんだん効かなくなり、効かなくなると、なお強い下痢止めを飲みます。

下痢止めには抗生物質が入っています。

抗生物質というのは、インフルエンザや肺炎など、急性期には効力を発揮しますが、それをずっと服用し続けると問題です。

腸の中のよい菌が全部死んでしまったというのです。

人間というのは菌がいるから生きていられるのです。

腸の中によい菌がいるから消化もしてくれます。

その菌がすべて死滅したので、何を食べても消化できなくなりました。

食べた途端に出てしまうというのです。

そうして、二十歳過ぎたらほぼ寝たきりになってしまったのでした。

二十歳の頃なら、同じ世代の仲間たちは青春を謳歌しているのに、しかし自分は寝たきりになって、ベッドとトイレの往復しかできないというのですから、絶望です。

そんな絶望のなかで、発酵食品に出会うのでした。

不思議とよい人との出会いがあって、彼女は発酵食品に出会うのです。

たまたま訪ねた物産展で、麹で造った甘酒を買って、飲んでみると、「これは腸にすごくいい、腸が喜んでいる」と感じたそうなのです。

よい発酵食品を食べると、体のよい変化を感じるようになりました。

体が喜びを感じるような、よい菌を取り入れようと、発酵食品を食べ続けたのでした。

すると、だんだんと食べたものを消化できるようになり、起き上がれるようになり、普通の日常生活に少しずつ、戻れるようになっていったというのです。

後に病気の原因は、十四歳の時に歯の治療で使った「アマルガム」だと分かったのでした。

その時に、栗生さんが言った言葉が胸を打ちました。

「自分は、十四歳のときに歯医者さんの治療台で水銀を入れられて、苦しみが始まった。

今、同じように歯医者さんの診察台の上で水銀を取り除いてもらって、苦しみが終わった。

自分は二十年、この診察台の上で夢を見ていたのだと思ったのです」。

そうおっしゃったのです。

そんな栗生さんとの出会いを通じて、自分で甘酒を作ったり、豆乳でヨーグルトを作ったりしていました。

それが数年前に、鎌倉に発酵食品を使ったお店があると知人に教えてもらったのが、sawviの寺坂寛志さんとの出会いとなりました。

私の著書『悩みは消える』の中で寺坂さんについて書いているところがあるので引用します。

「彼は発酵食品のお店を出しています。

その店が、なんとも不便なところにあります。

車も通れない、バイクでも簡単には行けないような町からはずれた所にあるのです。

案内板も、看板もわかりにくいものです。

そんなお店が、この頃繁盛しているのです。

平日でも予約が入り、土日には行列もできるほどだといいます。

私も興味があって、数回足を運びました。

もともと福井県内で糀の発酵食品を扱っているお店の倅で、「鎌倉で発酵の良さを伝えたい」ということで、自分の店を出したそうです。

鎌倉ですと、駅前の小町通りに行けば、いろんなお店があるのですが、「あんな誰でもすぐ行ける場所じゃなくて、この店にわざわざ地図を見て、探して、苦労して訪ねてくれる人に、最高のものを提供したい」と言うのです。

甘酒やスイーツ、ランチなどを、発酵食品を使った自然の素材で作っていて、私の感覚から言えば、けっこう「いい値段」なんです。

最初はお客が来なかったけれども、今では平日でも予約が入ったりしています。

評価されないような時期もあったろうと思います。

けれども、自分で「この素晴らしいものを伝えたい」という思いがあるから、簡単にはくじけない。

洋服も販売していて、安いものではありませんが、今ではよく売れているそうです。

彼はこうも言っていました。

「良いものを一生涯着てもらいたい。汚れたら染め直しします。メンテナンスもします」と。

そういう考えなのです。

駅から遠いし、車も入らない、看板もない。それでけっこういい値段がする。

そんな所に、来る人がいるのだろうかと思いましたが、私が行ったときは、平日の昼間にもかかわらず、買いに来ている人がいたのです。

彼の発想は、便利な駅前で、安い値段で大量に販売し、悪くなったらすぐに買い換えてもらうという、現代によく見られる発想とは全く逆です。

不便な所で、良いものを、その価値に見合った価格で売っている。

一度買ってもらったら、一生身につけてもらえるように、できることを最大限行なう。

こういう青年もいるんだなぁと思いました。」

と書いています。

そんな寺坂さんとの企画が「禅と発酵」でありました。

三十名限定の募集でしたが、皆さんとても満足してくれたようでした。

はじめに一時間私がイス坐禅を指導しました。

そのおりに、私が前の日から作っていた甘酒をみなさんに振る舞いました。

お腹を温めてイス坐禅をして心を落ち着けたあとは、寺坂さんのお話が一時間ありました。

発酵についてとても分かりやすく話してくださいました。

そしてsawviで作った糀の料理と、円覚寺の僧が作ったもので、お昼ご飯を召し上がってもらいました。

午後からは、寺坂さんと対談して、参加者からの質問を受けて終わりました。

イス坐禅とおいしい発酵食品と、とても充実した一日となりました。

禅と発酵ということで、私が感じることですが、発酵というのは、よい条件を調えさえすればあとは自然に任せておくとよく発酵してくれるのです。

坐禅も、似たところがあって、その暮らしや姿勢などの条件を調えておくと、あとは自然に任せればいいのだと思うのです。

イス坐禅などはまさにその通りで、手順を踏んで体をほぐし、姿勢を正して、条件を調えればあとは静かに自然とよい呼吸になり、穏やかな心になってゆくのです。

発酵食品は今の時代、とても大事なものです。

少しでも多くの方に発酵の大切さに気がついてもらえたらと思います。

 
横田南嶺

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