認知症の問題
認知症については、ずいぶん以前に、ある精神科の先生から、修行をした禅のお坊さんでも認知症になりますかと、聞かれたことがあります。
少し考えてみると、認知症になられている方もいらっしゃると思いました。
修行したお坊さんでも、ガンになることもありますし、いろんな病気もします。
認知症になることもあると思ったのでした。
もっともどれくらいの割合なのか、調査したような資料はありませんので、はっきりしたことは分りません。
誰しも避けられないものだと思います。
お釈迦さまが説かれた生老病死の苦しみに加えて、高齢化社会にはこの認知症の苦しみもあると、この頃はお話することもございます。
そもそも認知症とはどんなものなか、政府広報オンラインに「知っておきたい認知症の基本」というページがあるので調べてみました。
そこには、
「認知症」とは、さまざまな脳の病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障をきたした状態をいいます。
我が国では高齢化の進展とともに、認知症の人も増加しています。
65歳以上の高齢者では、平成24年度(2012年度)の時点で7人に1人程度とされ、年齢を重ねるほど発症する可能性が高まり、今後も認知症の人は増え続けると予想されています。
なお、認知症の前段階と考えられている軽度認知障害(MCI)の人も加えると4人に1人の割合となりますが、MCIの方がすべて認知症になるわけではありません。
また、65歳未満で発症する認知症を「若年性認知症」と呼んでいます。」
と書かれています。
加齢による物忘れと、認知症による物忘れとは異なるのです。
加齢による物忘れというのは、よく言われますが、朝ご飯で何を食べたかを忘れるというように一部を忘れるものだそうです。
認知症による物忘れというのは、ご飯を食べたこと自体を忘れるので、全部を忘れてしまうのだそうです。
そして加齢による物忘れでは、物忘れの自覚があるそうで、認知症による物忘れでは自覚がないのです。
認知症について、帯津先生に『ボケないヒント 認知症予防、わかってきたこと これからわかること』という著書があります。
この本は令和二年四月に発行されたもので、『週刊朝日』に2018年5月から2019年6月まで「帯津良一の『健脳』養生法ー死ぬまでボケない」を加筆修正したまとめたものです。
そこには、認知症について次の三つの種類があると説かれています。
引用します。
① アルツハイマー型認知症
「アミロイドB」というゴミのようなタンパクが神経細胞の周りに異常に蓄積して老人斑をつくり、その後「タウタンパク」が神経細胞の中に異常に溜まる。いずれの蓄積も最大の原因は老化。
②脳血管性認知症
動脈硬化による脳内血流の減少が原因。
動脈硬化を助長するものとして、高血圧症や高コレステロール血症が挙げられるが、主因はあくまで老化。
③ レビー小体型認知症
「αシヌクレイン」というタンパクが神経細胞内に溜まってレビー小体を形成するのが原因。これも老化現象。 なおレビー小体が脳幹部のドーパミン神経細胞内に形成されるとパーキンソン病の症状を呈する。」
という三つが説かれていて、帯津先生は、
「このように認知症はいずれも原因は老化にあるのです」と書かれています。
帯津先生によれば、やはり認知症は老化だというので、生老病死のひとつになるのだと学びました。
政府広報オンラインには、
「認知症の多くを占めるアルツハイマー型認知症や血管性認知症は、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)との関連があるとされています。
例えば、バランスの良い食事を心掛けたり、定期的な運動習慣を身に付けたりと、普段からの生活管理が認知症のリスクを下げると考えられています。」
と書かれています。
普段の生活管理が認知症のリスクを下げることが出来るのであれば、学ぶ必要があります。
帯津先生は「認知症を予防するには、免疫力と自然治癒力を高めなければいけない」と説かれています。
それでは、どうすればよいのか、先日の対談の折でも仰ったことは、「心のときめきこそが最大の要因になる」ということでした。
なぜなのかについては、『ボケないヒント』から引用します。
「なぜ心のときめきなのでしょうか。
それに答えてくれたのは、フランスの哲学者、アンリ・ベルクソン (1859~1941)です。
ベルクソンは生物の進化について考察し、進化のためには内的な衝動力、生命の躍動(エラン・ヴィタール)が必要だと論じました。
生命の躍動が生命体を突き動かすのだというのです。
生命の躍動によって内なる生命エネルギーが溢れ出ると私たちは歓喜に包まれます。
その歓喜は単なる快楽ではなく、創造を伴い、自己を向上させるのだというのです。つまり自己実現です。
私は、長年のがん治療の現場での体験から、この生命の躍動による歓喜こそが、免疫力、自然治癒力を高める要因だと確信しました。
そして、この歓喜とは、わかりやすく言えば、心のときめきのことなのです。」
ということなのです。
そして帯津先生の心のときめきというのは、「早寝早起き、仕事、執筆、太極拳、晩酌、旬の刺し身、女の色気」と書かれています。
早寝早起きや仕事も、帯津先生には「心のときめき」になるのです。
本には、
「朝5時30分には病院に着いて、7時30分にはその日の仕事の仕込みを終えます。
そのときのうれしさは、一日で最初のときめきです。
そして一日中、汗水たらして働く。労働そのものが好きなのです。
ですから、休日は大嫌い。
いつ頃からか原稿の依頼が舞い込むようになり、感謝感激です。
出だしは気が重いが、折り返し点を過ぎると、原稿用紙に向かうのが楽しくなります。
太極拳は連綿とした動きのダイナミズムが心のときめきに変わります。 太極拳を通じて心が深まっていきます。この道には終わりがありません。」
と書かれているのです。
対談で晩酌のお話をうかがいました。
この晩酌が人生最期の晩酌だと思っていただくと、心がときめくのだと仰っていたのが心に残っています。
一日を一生と思って生きる心にも通じると思いました。
帯津先生のように、元気に年をとってゆきたいと願うものであります。
日常のいろんな事に心がときめくというのは、まず心の感度を高めておくことが大事だと学びました。
横田南嶺