未来連福
自然や伝統文化、食育を通じて女性が豊かに子どもを育てていくことを目的にしています。
活動の一つに「東北支援」があり、特に福島の子ども達を支援しています。
毎年、福島の方々を鎌倉にお招きして、鎌倉でゆったり、のびのびとした時間を過ごして欲しいと願って活動してきています。
毎年、夏に行われていました。
主に建長寺様にお泊まりして過ごされるのであります。
さらに円覚寺にもお参りいただいています。
そして円覚寺では、毎年私が法話を勤めさせてもらっています。
この法話を通して、浪江町や南相馬、大熊町、川俣などいろんな方々とご縁をいただきました。
お手紙のやりとりを何名かの方とさせてもらってきました。
福島の方々の悲しみというのは深いものがあります。
津波で町を流された方もたいへんなことはいうまでもありませんが、少しずつでも町は復興してゆきます。
しかし、福島の方はなかなか先が見えないのであります。
今回も飯館村から南相馬市や福島市に避難された方々がお見えになってくださいました。
しかし、飯館から南相馬に避難して、避難した先の南相馬では、二〇二〇年の三月に震度六の地震に見舞われたのでした。
まだ復興がなされていないとの話をうかがいました。
そんな方々を今回鎌倉にお招きしたのでした。
八月六日に円覚寺にお越しくださいました。
その日は朝から天候が不安定でありました。
突然強い雨が降ったりしていました。
今回は、建長寺の半僧坊に登ったところで、雨に遭ってたいへんな思いをされたそうなのです。
建長寺でお昼をすませて、円覚寺までバスでお越しになりました。
皆さんが到着するまで、この会の中心となっている斉藤美代子先生とお話させてもらっていました。
例年は百名もの方をお招きするのですが、コロナ禍で四年ぶりとなるので、スタッフのことも考慮して人数を減らしたとか、四年でスタッフも年齢を重ねたことなどうかがいました。
また鎌倉に来られる方も、高齢の方が減っているとのことでありました。
コロナ禍三年の影響は大きいものです。
年を経ると、あまりいいことはないのがお互いでありますが、斉藤先生は、始めた頃のスタッフで小学生だった子が、もう高校生となってテキパキはたらいてくれていると教えてくださいました。
たしかに高校生のスタッフがよくはたらいてくれているのが目にとまりました。
私などの年齢になると、年を重ねるごとに、いいことは少ないのですが、小学生が高校生に成長するというのは素晴らしいことであります。
今回は、私の絵本『パンダはどこにいる?』を皆さんにプレゼントして、その絵本の話から始めました。
この絵本は、パンダがパンダであることに気づかずに外に向かって求めていて、最後に自分がパンダだったと気がついたという話しです。
お互い一人ひとり仏の心をもった素晴らしい存在でありながら、仏を外に求めて、仏のマネをして坐禅をしたりしています。
でも大事なことはお互いが生まれながらに仏の心を持っていることです。
そして仏の心とはどんな心なのかについて、坂村真民先生の詩を通じて話をしました。
今回紹介した詩は四つです。
まず「念ずれば花ひらく」の詩を紹介して、母が我が子を命にかけても守り育てる心を説きました。
その心こそが仏の心なのです。
念ずれば花ひらく
念ずれば
花ひらく
苦しいとき
母がいつも口にしていた
このことばを
わたしもいつのころからか
となえるようになった
そうして
そのたび
わたしの花が
ふしぎと
ひとつ
ひとつ
ひらいていった
そのあと、「飯台」の詩を紹介して、幸せとは何かを話しました。
何もかも生活のやり直しだ
引き揚げて五年目
やっと飯台を買った
あしたの御飯はおいしいねと
よろこんでねむった子供たちよ
はや目をさまして
珍しそうに
楽しそうに
御飯もまだ出来ないのに
自分たちの座る場所を
母親にきいている
わたしから左回りして
梨恵子
佐代子
妻
真美子の順である
温かいおつゆが匂っている
おいしくつかった沢あん漬けがある
子供たちはもう箸をならべている
ああ
飯台一つ買ったことが
こうも嬉しいのか
貧しいながらも
貧しいなりに育ってゆく子の
涙ぐましいまで
いじらしいながめである
それから「二度とない人生だから」を朗読して、最後に
「鳥は飛ばねばならぬ」を紹介しました。
鳥は飛ばねばならぬ
鳥は飛ばねばならぬ
人は生きねばならぬ
怒涛の海を
飛びゆく鳥のように
混沌の世を
生きねばならぬ
鳥は本能的に
暗黒を突破すれば
光明の島に着くことを知っている
そのように人も
一寸先は闇ではなく
光であることを知らねばならぬ
新しい年を迎えた日の朝
わたしに与えられた命題
鳥は飛ばねばならぬ
人は生きねばならぬ
一寸先は光だと話をしたのでした。
闇だ闇だと言っているといつまでも闇が続きます。
光だ光だと言っていると必ず光が射してくるものです。
念ずれば必ず花ひらくものです。
お互い発した言葉がこれからの未来を創ってゆくのです。
未来の幸福を築きあげてゆくものと信じます。
福島の方に少しでも光に向かって生きて欲しいと願ってお話させてもらったのでした。
私の法話のあとみんなで記念撮影をして、舎利殿などを拝観してもらったのでありました。
横田南嶺