平和への祈り – 比叡山宗教サミット –
比叡山宗教サミットというのは、どういうものかというと、当日いただいたパンフレットには、次のような開催主旨が書かれています。
まず「諸宗教の対話と協力に力を注がれたローマ教皇ヨハネ・パウロⅡ世聖下の提唱により、1986年10月に世界の諸宗教指導者がイタリアの聖地アッシジに集い、それぞれの宗教儀礼で、世界平和を希求する祈りを捧げました。」
と書かれています。
この世界の宗教指導者が一堂に会して世界の平和を祈るということが原点でありました。
そして
「この集いに参加した第253世天台座主山田惠諦猊下は、「アッシジの精神」を引き継ぎ、日本においても世界平和祈りの集いを執り行うことを世界の宗教者に提言いたしました。」
というのであります。
比叡山の山田惠諦座主というと、当時の日本の仏教を代表する方でいらっしゃいます。
その山田座主が、呼びかけられて始まったのでした。
「日本のさまざまな宗教者もそれぞれの立場で世界平和のための運動を展開しており、宗派を越えたご賛同をいただき、日本宗教代表者会議が主催者となり、1987年8月3日、4日の両日、比叡山山頂にて「比叡山宗教サミット『世界宗教者平和の祈りの集い』」が開催され、世界の諸宗教代表者と共に世界の平和を祈ることができました。」
というのです。
それから毎年八月四日に世界の宗教指導者が比叡山に集まって祈りを捧げるようになって、今回第三十六周年となったのであります。
一九八七年というと、昭和六十二年で、比叡山開創一二〇〇年の記念の年でありました。
その年には、比叡山ゆかりの各宗派が、根本中堂で法要を務めたのでした。
私もその年に建仁寺に入って、比叡山の法要に参列したことを覚えています。
当時の山田座主のお姿を根本中堂で拝んだ感動は忘れないのであります。
建仁寺は、開山栄西禅師が比叡山で御修行されていたという深いご縁があります。
今でも建仁寺では、毎年の開山忌を厳修する前に、比叡山にお参りして、栄西禅師の御修行の跡地を清掃して読経するという習慣があります。
私も修行時代に掃除してお参りしていました。
今回久しぶりに比叡山に登り、宗教サミットの開催まで少し時間があったので、栄西禅師の修行跡地にお参りしました。
私が修行していた頃には、この比叡山に登って、清掃して読経をして、それから修行僧は比叡山を駆け下りて、更に建仁寺まで歩いて帰っていたのでした。
比叡山の山を駆け下りるのが楽しかったのでした。
懐かしい思い出であります。
栄西禅師修行の跡地にお参りしてから、宗教サミットに参列しました。
初めてこの宗教サミットに参列した折に、レセプションの席で、堀澤祖門先生の臨席となって、堀澤先生から親しく声をかけていただいて、それから堀澤先生とのご縁ができたのでした。
こういう各宗派、宗教界の代表が集まる会合にでるといろんな出会いがございます。
今回も控え室で、全国青少年教化協議会の神仁先生にご挨拶することができました。
更に、一燈園の西田多戈止(たかし)先生にお目にかかることができました。
今月一燈園にお参りする予定になっていましたので、なんというご縁かと感激しました。
控え室で隣に坐らせてもらったので親しくお話させてもらいました。
西田多戈止先生は、かの西田天香先生の御孫さんでいらっしゃいます。
昭和五年生まれですので、九十三歳でいらっしゃいますが、とてもお元気でいらっしゃいます。
私が今月うかがうことを西田先生もご存じくださっているようで、これにも感激しました。
短い時間でしたが、いろんな話をさせていただくことができました。
堀澤先生にも久しぶりにご挨拶をさせていただきました。
今までは、屋外で式典や祈りの会が行われていましたが、昨年悪天候に遭ったことから今回式典は延暦寺会館の屋内で行い、平和の祈りを屋外で行うという二部構成となっていました。
式典では、黒住教の教主黒住宗道先生のすぐ真後ろに坐らせていただいたので、親しくご挨拶させてもらいました。
式典は、世界の宗教の代表が六名、それぞれの祈りを捧げそしてお言葉を述べてくださいました。
最後に世界仏教徒連盟のパロップ・タイアリー会長と、ローマ教皇庁諸宗教対話省ミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソック長官のメッセージが読まれました。
平和の祈りは、屋外で行われます。
これには今の天台座主も参列されます。
大樹孝啓座主は九十八歳でいらっしゃいます。
そのお姿を拝見するだけでも有り難いものであります。
また平和の祈りでは、ただいまの曹洞宗管長であり、総持寺の石附周行禅師様にもご挨拶することができました。
石附禅師は、長らく大雄山の山主でもいらっしゃいました。
大雄山も総持寺さまも共に神奈川でありますが、なかなかお目にかかる機会がありませんでしたが、今回比叡山の聖地でお目にかかることができたのでした。
レセプションの席では、融通念仏宗の吉村暲英管長と親しくお話させてもらうことができました。
平和の祈りというのは、長年続けていますものの、実際に戦争はなくならないのが事実であります。
いただいたパンフレットの「比叡山メッセージ」には、
「われわれの使命はあまりに大きく、われわれの力はあまりに小さい。
それゆえわれわれは、まず祈りから始めなければならない。
われわれを超えた大いなる力によってわれわれの真実の祈りは聴かれ、われわれの切なる願いは顧みられることをわれわれは認識し確信する。
祈りや瞑想、 さらに感謝を通して、われわれの心と思いは浄められ、ささやかなりとはいえ平和のために役立つものとならしめられるであろう。
平和のために祈るべくここに集まったわれわれの営みが、世界の到るところで繰り返され、繰り拡げられ、 全人類が渇望してやまないこの大いなる平和の賜物が、われわれの時代に与えられんことを切に祈る。」
と書かれていました。
この祈りの心を失ってはならないと比叡山で誓いを新たにしたのでした。
横田南嶺