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臨済宗大本山 円覚寺

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2023.05.04
今日の言葉

答えを急がない

本日みどりの日です。

先日の二十九日に、ライブ配信をしていて、その日をみどりの日と勘違いしてしまいました。

もう2007年から、みどりの日は五月四日になったのでした。

四月二十九日がみどりの日であったのは、1989年から2006年まででした。

この頃はいろんな方から書籍をいただくことが多くなっています。

直接頂戴することもあれば、送っていただくこともございます。

この贈呈の書籍が多くなって、今ではとてもすべてを読むことは困難な状況であります。

もっともいただいた方がよく存じ上げている方であれば、本腰を入れて読んで感想を送ります。

しかし、ときには、全く存じ上げない方から送っていただくこともあるのです。

もうかなり以前のことですが、出版社から直接ある書籍が送られてきました。

懇意にしている出版社や、出版社に知人がいる場合には、よくあることでもあります。

しかし、その出版社のことは存じ上げませんでした。

「イースト・プレス」という出版社です。

著者はどなたかと見ると、枝廣淳子先生という方です。

出版社も著者も存じ上げずで、どういうわけで送っていただいたのかよくわからないままにしておいていたのでした。

本の題は、

「答えを急がない勇気」であります。

本のカバーには、たくさんの文字が書かれています。

「ネガティブ・ケイパビリティのススメ」

「「わからない」不安を受け容れ、正解がない問題に向き合うための処方箋」

「判断を迫られる数々の場面 会社・学校・家庭・地域社会…」

「早さ・効率だけでは解決しない」

などの文字がございます。

存じ上げない方から手紙などが来る場合は、私の本を読んだという方が多くあります。

この頃はYouTubeを聞いたという方も多いものです。

さていずれにしもどうして送っていただいたのかも分からないままにしていたのでした。

先日ようやくその本を開いて拝見していると、なんと書籍の中に私の名前が出ていたのでした。

この著者の方が、私が出した『禅と出会う』を読んでくださったのでした。

巻末の主要参考文献という一覧に、錚々たる著者の書籍や古典に並んで、なんと「横田南嶺『禅と出会う』春秋社2022」と書いてくださっているのであります。

「ネガティブ・ケイパビリティ」というのは、イギリスの詩人ジョン・キーツが残した言葉で、「答えの出ない状況に対して、答えを出さないままに耐える力」を指すのだと教わったことがあります。

答えを出さないままというのが難しいのです。

私たちはすぐに答えを欲しいと思うものです。

分からないというのは落ち着かなくて、分かりたいのであります。

本書には、次のように書かれています。

「「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学―』で、著者の山鳥重(やまどりあつし)氏が「意味がわからないと、わかりたいと思うのは心の根本的な傾向です」と、何でも意味を見つけたがる私たちについて、わかりやすく説明しています。

われわれは何にでも意味を見つけたがります。どんなものでも意味がなくては落ち着きません。

意味とは、とりもなおさず、わからないものをわかるようにする働きです。目の前に得体の知れないモノを突き出されると、われわれの心は当惑します。 必ず 「それ、何?」と聞きます。あるいは思わず手を伸ばして触ろうとします。 触って何かわかろうとするのです。」

「山鳥氏は、「わかったという信号が出ると、心に快感、 落ち着きが生まれる」と言います。このように、「わかる」、「わかった」を求めるのが、人間としての進化の結果としての根本的な傾向だとしたら、私たちがそうしがちなのも無理ありません。」

というのです。

枝廣先生はそんな「ぱっと理解し、ぱっと反応する」ことを求められる社会に、生きているのが私たちなのだと仰せになっています。

そして、そんな時代に重宝されるのが、「ポジティブ・ケイパビリティ」だと説かれています。

「ポジティブ・ケイパビリティとは、「情報を収集する能力」、「分析する能力」、「計画を立てる能力」、「資料を作成する能力」、「スピーチをする能力」、「文章を書く能カ」、「プレゼンテーションをする能力」など、 「物事を処理する能力」であり、いわゆる「問題解決能力」と言われるものです。」

なるほど、これらは今の時代に必要とされるものばかりです。

それに対して、ネガティブ・ケイパビリティとは、「何かを「しないでおく」能力」だと枝廣先生は説かれています。

具体的には、

「事実や理由をせっかちに求めず、不確実さや不思議さ、懐疑のなかにいられる能力」

「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」

「曖昧さやパラドックスと共存し、それを許容する能力」

「「すべてはわかっていない」状態を良しとし、中途半端な知識を合理化したり、事実を追い求めたり、既存の知識や考え方で思考停止したりすることなく、不確実で曖昧な状態のなかにとどまる能力」

「違和感を抱えたまま、とどまる力」

と分かりやすく説いてくださっています。

それから、私の著書のついては、「おわりに 本当に大事なものを見落とさないために」に出ています。

引用しますと、

「ネガティブ・ケイパビリティについてあれこれ思いを馳せていたとき、たまたま読んでいた臨済宗円覚寺派管長の横田南嶺氏の『禅と出会う』という本で、坂村真民氏の「大木」という詩に出会いました。」

と書いていて、

「大木たちがわたしに教えてくれた一番忘れられない話は
根の大事さということであった」

から始まる真民先生の詩を紹介してくれているのです。

更に、

「そして、横田南嶺氏は次のように「根」の大事さを説かれています。

根があるから、立っているのです。

目に見える世界というのは、地上の幹や枝や葉や花。

地面の下は目に見えない世界です。

しかし、その世界がないわけではありません。地面の下の根がなければ、木は立つことができないのです。

大切なのは根です。」

という部分を引用してくれています。

それから「ちなみに、この『禅と出会う』にも「ネガティブ・ケイパビリティ」が出てきて、ちょっとびっくりしました。

「長年やってきて学んだことの一つは、どの問題もそう簡単に答えは出ない、その答えの出ない問題をずっと抱えて生きていくというところに、深い意味があるのだということです。今風に言えば、「ネガティヴ・ケイパビリティ」というのでしょうか。

答えの出ない問題に向き合い続ける力。これは禅の問題と通じるところがあると思いました。

すぐに答えが出るものというのは、あまり大したものではありません。

本当のものは、答えが出ない。

そういうものを抱き続けて、忘れずに抱え続けると、いろんな発見がある。」

という言葉を引用してくださっているのです。

「「本当のものは答えが出ない」――そういうものを抱き続ける力、葉や花を地中深く支える力であるネガティブ・ケイパビリティを、自分自身にも、部下や子どもたち、まわりの人たちにも深くはぐくんであげること。」、これが、これからの時代に生きていくには大事なことではないかというのであります。

私の拙い著書の一節がお目にとまって引用してくださったことに感謝します。

ネガティブ・ケイパビリティについて、とても分かりやすくまとめられている本であります。

 
横田南嶺

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