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臨済宗大本山 円覚寺

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2022.08.30
今日の言葉

小鳥来る

ありがたき空気や水や小鳥くる

という三橋敏雄さんの俳句を毎日新聞で拝見しました。

八月二十三日の毎日新聞の「季語刻刻」というコラムであります。

この俳句は私も存じ上げていて、自分のノートに書いているものであります。

コラム記事を書かれた坪内稔典さんは、

「空気や水は昔からある。ごく自然にある。そのことのありがたさを近くにやってきた小鳥によって気づかされたのか。

小鳥はたとえば池で水を浴び、水を散らした。

その水が飛んで空気がきらきらした。

その際の水と空気が印象的だったのだろう。

実は、秋になると小鳥が来るのもあたりまえ。小鳥が来たこともありがたかったか」と記されています。

私の部屋の外にも蹲踞があって、そこによく小鳥が来ては水を飲んでいます。

寺にいると、小鳥は実に身近なものであります。

「地震あとの空の青さに小鳥くる」と詠ったのは丸山照子さんでした。

「小鳥来る日本列島揺れ止まず」

とはどなたの作は分かりませんが、私のノートの記してあるものです。

震災のあと余震が続いた頃の句かもしれません。

この句のあとに、私のノートには、

「大津波、台風、火山の噴火、地震、大洪水などたえず何か大災害にさらされた日本は、地球上の他の地域よりも危険な国であり、つねに警戒を怠ることのできない国である」という、大正時代に駐日大使をつとめた仏詩人クローデルの言葉が書かれていました。

「大地は堅固さというものを全く持ち合わせていない」詩人が小石、砂、溶岩、火山灰が堆積した国土の不安定を強調したのもこれが関東大震災直後の文章だから。」

という文章は二〇一四年十月四日の毎日新聞の余録にあったものです。

更に二〇一一年九月一日の余録には、

「この動く大地の上では、日本人はただ一つの安全策しか見いださなかった。それは自分をできるだけ小さく、できるだけ軽くすることである。薄く、重さがなくほとんど場所もとらぬようにすることである」。

ポール・クローデルはこう記した。

関東大震災の時の駐日大使だった仏詩人のクローデルだ。

彼は津波、地震、台風、噴火、大洪水などあらゆる自然災害にさらされた日本人が、それでもくつろぎを得られるライフスタイルを作り上げ、この国土を熱烈に愛していることに温かなまなざしを注いでいる。

「小さく、軽く」とは紙と木の家に家財もわずかな簡素な生活と、驚くべき自制心に満ちた人々を指している。

88年後、日本人の暮らしは様変わりした。

ただ今度の震災でも人々の自制心と思いやりは世界の注目を集めた。

この災害列島の住人ですら言葉を失ったマグニチュード9というわが国史上空前の巨大地震だ。」

と書かれています。

そして記事には、

「過去の「小さく、軽く」の暮らしを捨て、豊かさや安全を信じ込んでいた日本人を襲った「想定外」だ。

クローデルは「日本人は自らを取り巻く危険に満ちた神秘への感情を決して失わない」と述べた。

だが私たちはその「危険に満ちた神秘」を忘れていなかったか。」

とあります。

今もなお世情揺れやまぬこの頃なのであります。

「小鳥来る」というと、中川宋淵老師の句を思い起こします。

樹海晴れてはや渡り来る小鳥哉

という句であります。富士山頂の句です。

秋晴れて火口を落ちる砂の音

という句と共に老師の著書『詩龕』にございます。

宋淵老師は、三島の龍沢寺の老師でありました。

明治四〇年のお生まれで、松原泰道先生と同じ年であります。

山口県岩国に生まれています。

東京帝国大学文学部を卒業されて、山梨県の向嶽寺で得度されました。

その後龍沢寺の山本玄峰老師に師事して修行され昭和二六年、その跡を継いで龍沢寺の師家になられました。

たびたびアメリカに渡り、禅道場を開いておられます。

昭和五十九年三月十一日に七十六歳でお亡くなりになっています。

私が出家した白山道場龍雲院で、玄峰老師にお目にかかったのだとうかがっています。

玄峰老師が戦前の白山道場で禅会を開いておられたのでした。

そこで宋淵老師は玄峰老師にであったのでした。

私が学生の頃、白山道場の小池心叟老師のところにいて、ある日うかがうと、老師が、昨日突然中川宋淵老師がお見えになったのだと仰っていました。

突然老師が見えて驚いたというのです。

なんでも宋淵老師が、自分が玄峰老師とご縁ができたのはこの白山道場のおかげだとお礼を言いに来たんだそうです。

そんなことがあってしばらくした後に宋淵老師はお亡くなりになったのでした。

死を察してお礼に来たのかなと小池老師は語っていたことを思い起こしました。

宋淵老師が出家を決意されたときの句が

涼しさや心をうつす水と空

というものであります。

友人を亡くしたお通夜の晩には

君が逝く夜は美しき星の河

という句を残されています。

新聞の記事から宋淵老師のことを思いました。

同じ八月二十三日の読売新聞の編集手帳には、トルストイの言葉が載っていました。

「砲弾を浴びた若い貴族が愛国へと突き動かされる生き方にむなしさを覚える場面」です。

「大地に倒れ、視界に空のみが広がった。

どうして俺は今までこの高い空を見なかったんだろう?

今やっとこれに気がついたのは、じつになんという幸福だろう。

そうだ!この無限の空以外のものは、みんな空だ、みんな偽りだ」(米川正夫訳、岩波文庫「戦争と平和」1 )

ウクライナの戦争が始まって半年になると新聞に書かれていました。

まだ終わらないのであります。

コロナもまた終わりが見えません。

不安定な世情の中で、変わることのない秋の空や、飛んでくる小鳥に目を向けると心がホッとするものです。

 
横田南嶺

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