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臨済宗大本山 円覚寺

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2022.07.31
今日の言葉

闇より光に

お釈迦さまのお言葉に、

「この世の中には四種類の人々がある。

闇より闇に赴く人々。

闇より光に赴く人たち、

光より闇に赴く人たち、

および光より光に赴くものがそれである」

というのがあります。

青山俊董老師が、『さずかりの人生』の中で引用されています。

お釈迦さまが、祇園精舎を訪れたコーサラ国王に語られた言葉であります。

青山老師は、この言葉から二つのことを学んでおきたいと書かれています。

一つは、「人生変えてゆくことができる」ということ。

二つ目は、「その変えてゆく主人公は私でしかない」ということなのであります。

先日岸田ひろ実さんと奈美さん親子にお越しいただいて、YouTube対談を収録しました。

岸田奈美さんとは、以前にも円覚寺のYouTubeチャンネルで対談したことがありました。

今回は、主にお母様の岸田ひろ実さんのお話をうかがいました。

岸田ひろ実さんとのご縁は、二〇一七年二月岸田さんが致知出版社から『ママ、死にたいなら死んでもいいよ』という本を出版されたことから始まります。

この本が出版されて岸田さんの講演会が都内のホテルで開かれて、そのお話を聞くために私も出掛けたのでした。

受付で、大勢の方が並んでいる中で、私もその最後尾で並んでいると、スタッフの方がすぐに私に声をかけてくださり、控え室に案内してくださって、岸田ひろ実さんにご挨拶させてもらったのでした。

この時に、大勢並んでいる中で私を見つけて声をかけてくれたのが、岸田奈美さんでした。

なんと気のつく方だなと思ったのが最初でありました。

はじめて拝聴した岸田さんのご講演はすばらしい内容でありました。

内容のみならず、その話しぶり、お人柄にも深く感銘を受けました。

是非とも円覚寺でも講演いただきたいと思って、二〇一八年の円覚寺夏期講座にお招きしたのでした。

それから、二〇一九年の秋にも円覚寺で対談をさせてもらいました。

これは当時岸田さんが勤めていたミライロという会社の企画でありました。

岸田奈美さんとは、そのたび毎にお目にかかっていましたが、昨年の円覚寺夏期講座には講師を務めていただきました。

三十歳で夏期講座の講師を務めるのはおそらく最年少ではないかと思います。

岸田ひろ実さんの壮絶な人生体験は、致知出版社の書物のオビからうかがうことができます。

本の帯には、

27歳で長男を出産。知的障害のある子だった。
37歳、最愛の夫が突然死。心の支えを失う。
40歳、生存率20%の大手術。無事生還するも下半身麻痺となり、車椅子生活に。
50歳、(現在)これまでの経験をもとに年間180回の講演、人々に生きる勇気を与えている。

と書かれていますように、今日に到るまでに壮絶な体験をなされた方です。

そしてこの本が出版された後にも、また大病をなされたのでした。

そんな体験を乗り越えて、今年新潮社から『人生山あり、谷あり、家族あり』という本を出版されたのでした。

私もこの本を送っていただいていました。

感動の書物なのであります。

岸田ひろ実さんには、三年ぶりにお目にかかりました。

大病をなさったとうかがっていましたが、お見受けしたところお元気になられたご様子で安堵しました。

何度もお目にかかっていますので、気楽に対談して、いろんなお話を聞くことができました。

私もはじめてうかがう話が多かったのですが、驚いたのは、奈美さんが初めて母から聞いたという話もあったのでした。

楽しく話ながらも、涙を誘われる話でもありました。

お送りいただいた本の中で、感動した話をひとつご紹介します。

奈美さんと弟の良太くんとはとても仲がいいそうなのです。

それにはこんな過去があったという話なのです。

奈美さんが幼稚園に通っていた頃、岸田さんは良太くんを抱っこして、奈美さんの手を引いて買い物に行く途中、奈美さんはつまずいて転んで大泣きをしてしまったのでした。

岸田さんはダウン症で知的障害がある息子のことで精一杯で全く余裕がなかったというのですが、じっとしていない良太くんを抱きかかえながら奈美さんを抱き上げることはできず、「早く立ちなさい!」と言ってしまいました。

そう言われた奈美さんは、さらに大泣きしたそうです。

そして奈美さんは岸田さんにこう言ったそうです。

「ママは私のことが嫌いでしょ。好きなのは良太だけでしょ。私はいなくてもいいんでしょ!」と。

岸田さんはどうしてかと聞くと、

「だって、ママは良太が転んだら大丈夫?ってやさしく言うけど、 私が転んだら、早く立ちなさいって怒って言うでしょ」というのでした。

岸田さんは頭を岩石で殴られたくらいの衝撃だったというのです。

岸田さんにしてみれば、二人のことを同じだけ好きなのです。

岸田さんは、無意識のうちに、障害があって成長も遅く、手のかかる良太くんにばかり目を向けていたことに気がつきました。

岸田さんは母親失格だと本当に落ち込んだそうです。

そこで岸田さんは三つのことを決意されました。

あなたのことが大好きだという思いを、奈美さんにわかるように伝えるためです。

一つは、毎日、褒めること。
二つ目は、毎日、大好きだよと伝えること。
三つ目は、毎日、ギュッと抱きしめること。

要するに、気づいてもらえないなら、気づくように態度で示そう作戦だというのです。

対談でも実際にこの通り実践したことを語ってくれました。

本書の中では、

「大好きや愛してる、 大切なんだという気持ちは、親子だから、家族だから伝わっている――それは決して当たり前じゃないんだということを。

だからちゃんと声に出して、抱きしめて、ちゃんと形にして伝えなきゃいけないんだということを。

そして、優しくされた人は、人に優しくできる。」と書かれています。

そうして奈美さんに愛情を伝えていると、今度は気がつけば、奈美さんが良太くんのことが大好きで、良太くんは奈美さんのことが大好きで、お互いがお互いのことを大切に、支え合う姉弟になっていったというのです。

そこで岸田さんは、

「人は、人から大切にされると、人を大切にできる人になるんだ」と仰っていました。

大切な教えだと思いました。

いろんなご苦労を体験された岸田さんは、闇の中にいたとも言えましょう。

しかし、ご自身の努力とまわりの愛情で闇から光に赴いたのでした。

仲の良いお二人のご様子を拝見しているだけで、こちらも光を分けていただいた思いでありました。

人には闇を光に変える力がある、それは愛情のある言葉と行いによるものだと教わることができました。

 
横田南嶺

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