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臨済宗大本山 円覚寺

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2022.06.04
今日の言葉

マインドフルネスの素晴らしさ

禅宗の開祖である達磨大師は、もと印度の香至国の王子でありました。

出家して、お釈迦さまから第二十七代目の法を継がれた般若多羅尊者に師事されました。第二十八代目の法を継承して、尊者の遺言によって印度を離れて、海路はるばる中国へと渡られたのでした。

はじめ梁の国に到り、その王である武帝に招かれました。

梁の武帝は、「仏心天子」と称されるほど仏教の熱心な信者であり、たくさんのお寺を建て僧侶を供養し、自ら袈裟をかけて経典を家臣達に講義するほどでありました。

お釈迦さまから第二十八代目の法を継がれた尊者が印度より見えると聞いた武帝は、喜んで達磨大師を迎え入れました。

武帝は早速達磨大師に尋ねました。

「自分は即位以来寺を造り経典を写し僧を供養することは数え切れない程であります。この私にどんな功徳があるでしょうか」と。

恐らく武帝はさぞ達磨大師からお褒めの言葉をいただけると思ったものでありましょう。

しかしながら、達磨大師の言葉は一言「並びに功徳無し」でありました。

武帝は、納得がいかず「どうして無功徳なのですか」と問うと達磨大師は「これはただ人間界天上界の小さな成果に過ぎず、それにとらわれると却って迷いの原因にもなりかねません」と答えたのでした。

そこで達磨大師の画に「無功徳」という讃を書いたりしています。

この達磨大師の故事からも、禅宗では功徳を求めることをしないように説かれることが多いのです。

よく御利益ということばも耳にしますが、『広辞苑』で調べてみると

一番目に仏教語として、「ためになること。物質的あるいは宗教的な恩恵を与えること。一説には、自らを益するのを功徳、他を益するのを利益という。二番目には神仏の力によって授かる利福。利生」と解説されています。

自らを益するのが功徳、他を益するのが利益だというのです。

よく禅の老師が、坐禅しても何もならないと説かれるので、あまり禅で御利益を説かれることも少ないのです。

それに比べるとマインドフルネスというのは素晴らしいものです。

先日禅僧であり精神科医でもある川野泰周さんにお越しいただいてマインドフルネスの講義をいただきました。

まず川野さんが、アメリカ国立衛生研究所で発表されている、マインドフルネス瞑想が次の症状の軽減に有効であると認めているということを示されました。

疼痛、高血圧、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、うつ病、不安障害、不眠症、喫煙関連問題、更年期障害の症状などというのであります。

もっともマインドフルネスストレス低減法を確立されたジョン・カバット・ジン先生は、痛みを軽減することに効果を見いだしたのでした。

末期癌の痛みやリューマチの痛みに効果があるというのです。

ジョン・カバット・ジン先生は、一九九〇年に『マインドフルネスストレス低減法』という書物を出版され、マインドフルネスが世に知られるようになっていったのでした。

そんなに御利益のあるマインドフルネスとは、そもそもどういうものかというと、
「今この瞬間の体験に注意を向け、評価をせず、とらわれのない状態で観ること」なのであります。

その内容は、気づきと受容です。

外から入ってくる情報と自らの内部から湧いてくる情報、いずれにも自在に注意を向けられる状態に近づいてゆくのが気づきであり、得られた情報に対し、批判したり先入観で決めつけたりすることなく、ありのままに受け入れられるようになることが受容であります。

私たちは、ふだん目の前のことに意識が向いていない状態であることが多いのです。

今やっていることの外に心が向いていることを、マインドワンダリングというのだと教わりました。

心ここにあらずという状態です。

もっとも今やっていること以外に心を向けることができるというのは、人間の特権のひとつなのだと川野さんは説明してくれていましたが、目の前の対象に意識を向けるのが一番幸せなのだと教えてくださいました。

マインドフルネスは、仏教では「正念」に当たります。

川野さんは白隠禅師の説かれた 「正念工夫」として『遠方の病僧に贈りし書』 より、次のことばを引用されました。

「「正念工夫」こそ、この世にて浄土を発見し、仏となる方法であり、浄土に生まれている仏なるわが身を悟ることこそ、人生で第一に決定すべき重要なことであると知るべきであります。」

「すべては観念にしたがって創られるものであります。 妄念と正念によって生ずる地獄と極楽とを知るべきであります。」

というものです。出典は、直木公彦先生の (1975) 『白隠禅師一健康法と逸話』( 日本教文社)からです。

不安障害や、不眠に対するマインドフルネスの効果を実際の数値を示してくださり、身体疾患に対しても効果があるというのです。

マインドフルネスで生じる脳機能にも変化があるそうで、注意制御機能の向上、身体感覚(内受容感覚)への気づき、体験に対する情動反応の変化、自己感における客観視(メタ認知)など活性化したり、強化されるというのであります。

瞑想を習慣にすることによって、不安に対してぶれない心が育てられることを、内側前頭前野や扁桃体の変化を通して示してくれました。

そんなたくさんの御利益を聞いてから実践するとやる気が一段と上がるものです。

最後には呼吸瞑想を実践しました。

椅子の上でも、 床の上でもいいのです。

背筋を伸ばして軽くあごを引きます。

手は膝かももの上に手のひらを上にして乗せておきます。

目を閉じて、 呼吸に注意を向けます。

呼吸を調節しようとしないというのが、私たちが行っているのと異なる点です。

ありのままの呼吸にまかせ、 鼻からの空気の出入りや、お腹が膨らみ、しぼむのを感じるのです。

それから雑念を断とうということをしません。

雑念が浮かんでもよいというのです。

雑念が起きたら、そっと呼吸に注意を戻すのです。

この気づいてやさしく呼吸に戻すというのはマインドフルネス瞑想の大事なところなのだそうです。

これを繰り返すのです。

最初は30秒でもよいのだそうです。

ただあまり心が不安な状態のときには、すぐにマインドフルネス瞑想を行うよりもまずぼんやりとリラクックスした状態になることが大事で、それから瞑想をした方がよいと教わりました。

いつもながら、明るく優しい川野さんのご講義を拝聴しているだけで、こちらがリラックスした状態になれるのでありました。

川野さんのご人格に接するとマインドフルネスの素晴らしさを感じるのであります。

 
横田南嶺

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