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臨済宗大本山 円覚寺

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2021.07.19
今日の言葉

腰骨と丹田

あの寺田一清先生と初めてお目にかかったのは、今からもう九年前のことであります。

寺田先生からは、いろんな話をうかがったのでありますが、今も一番印象に残っていることがございます。

森信三先生の最晩年の頃に、寺田先生が、「二十一世紀の教育で何が一番大事ですか」とお尋ねしたそうです。

そうしたら森先生は即座に、『それは君、立腰教育だよ』と言われたというのです。

寺田先生はその時「私はこれを我が師・森信三の遺訓と受け止め、白寿を迎える時まで語り続けたいと念じております。」と仰ったのでした。

立腰については、たびたびお話していますが、腰骨を立てることであります。

この話をうかがった時には、腰骨を立てるということが、これほどまでに大切にされるのかと驚いたことでした。

寺田先生は、残念ながら白寿には及ばなかったのですが、九十四歳でお亡くなりになるまで、この「立腰」を貫かれたのだと思いました。

寺田先生が編集された『森信三一日一語』にも、立腰についての言葉がいくつもあります。

「つねに腰骨をシャンと立てること― これ人間に性根の入る極秘伝なり。」という言葉が、一月二日のところにございます。

では、どのようにして腰骨を立てるかというと、森先生は、
「立腰の三要領」として、

第一、先ず尻をウンと後ろに引き、
第二に腰骨の中心を前へウンと突き出し、
最後に下腹に力を入れて持続すること

なのであります。

私たちの坐禅においても、この腰骨を立てることは大切です。

坐禅は、お互いの身体を調え、呼吸を調え、そして心を調えることです。

お釈迦様が、『法句経』の百六十番に

おのれこそ、
おのれのよるべ、
おのれをおきて、
だれによるべぞ、
よくととのえし、
おのれにこそ、
まことえがたき、
よるべをぞ獲ん。

と説かれたように、よく調えられた己こそが、お互い真のよりどころとなるのであります。

禅の書物に、「腰骨を立てる」という表現は見られませんが、「脊梁を竪起する」という言葉として出てまいります。

あの白隠禅師の言葉にも、

「それ禅定を修める者は、先ず厚く蒲団を敷いて結跏趺坐し、寛く衣帯を繋け、脊梁を竪起し、身体をして齊整ならしむべし。而して始め数息観を為す」とございます。

坐禅しようと思う者は、まず厚く座布団を敷いて、結跏趺坐という、両足を股の上に乗せて坐を組み、衣や帯をゆったりとさせて、脊梁骨を立てて、身体をきちんと整えることだ。そうして、自分の呼吸を数えることだ」と説かれているのです。

脊梁という言葉は見慣れないかも知れませんが、『広辞苑』にも「背骨、背筋、脊柱」のこととして解説されています。

背骨を立てるには、まずその土台となる腰を立てないと話になりません。

これが実に難しいものです。

私の長年探求し続けています。

腰というのは文字通り人間の、肉体の要であります。

「腰を入れる」というのは、「本気になる。覚悟をきめてやる。」ことであります。

森先生は、腰が入らずに姿勢の乱れた人にも分かりやすいように、お尻を後ろに突き出し、腰骨を思いっきり前に突き出してと説かれていますが、あまりこれを意識し過ぎると、腰に無理な力が入り過ぎてしまいます。

腰の抜けた姿勢を矯正するために説明されたと受け止めておくとよいかと思います。

無理に腰を入れすぎると、腰が張ってしまいます。

これでは長続きしなくなってしまいます。

そこで、腰を立てるというのは、大地を踏みしめて、起ち上がるぞという気持ちがわきあがってくることが大切であります。

人の講義などを聴くときにも、頬杖をついて、腰を曲げていたのでは、身に入りません。

よし、学ぼう、聴いておこうという気持ちが沸いてこそ、腰がすっと立つものであります。

人間の人間たる由縁は、大地を踏みしめて二本の足で起ち上がったことでありました。

森先生は、「立腰道の究極は「丹田の常充実」にあり。」と示されています。

丹田について『広辞苑』には、「下腹部の、臍(へそ)の下にあたるところ。ここに力を入れると、健康と勇気を得るといわれる」と説明されています。

お臍から手の指の四本分の幅くらい下のところです。

腰骨を立てることによって、丹田が充実するのです。

それによって気力が充実してくるのです。

白隠禅師は、この丹田を充実させることを特に重視されていました。

白隠禅師は、青年の頃に心身を壊して病になってしまった時がありました。

あまりにも厳しい修行に身を入れすぎた為かと思います。

それを、専ら「内観の法」というのを実践して克服されたのでした。

「内観の法」とは、気海丹田に氣を満たす観法のことです。

自らの意識を丹田から腰、脚へ、そして足の裏まで満たしてゆくのです。

吸った息は肺に入りますが、更に意識で、お腹に満たし、腰から脚へと満たし、更に足の裏にまで満たしてゆくように意識します。

明治時代から大正にかけて、岡田式静坐法を普及させたのが、岡田虎二郎先生です。

森先生は、若き日に、岡田虎二郎先生の静坐の姿を見て感銘を受けられ、立腰に目覚められたのでした。

岡田虎二郎先生は「満身の力を丹田にこめての一呼吸一呼吸は、肉を彫刻してゆく鑿だ。」

「丹田の一点の外、力を入れるな。」

と説かれています。

吸った息を丹田に満たして、その丹田の力を抜かぬようにして、息を細く吐き出すのが岡田式の呼吸法です。

岡田虎二郎先生もまた、自らの病を白隠禅師の内観の法によって克服された体験を持っています。

坂村真民先生にも「気海丹田」という題の詩があります。

「気海丹田 
もうこれしか 
ないです 
この四文字を 
しっかりと 
臍下に 
おさめて
前向きに 
生きることです」

というのです。

今の時期に、やはり腰骨を立てて、丹田に気を満たすことが大切であります。

そうすることで気力が満ちて心が前向きになってきます。

 
横田南嶺

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