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臨済宗大本山 円覚寺

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2021.01.14
今日の言葉

積徳累行

平成二十七年から、毎月駒澤大学の小川隆先生に講師をお願いして、『臨済録』の勉強会を続けてきました。和尚様方限定の勉強会です。

わたくしたち僧侶は外に向けて教えを説いていくことが大切ですが、それと同時に、内に向けて自分たちの学びを深めることも大切にしなければならないと思って始めたものです。

ところが、昨年の二月に開催して以来、コロナ禍のご多分に漏れず、休会となっていました。

昨年の秋十月から、小川先生にご無理をお願いして、円覚寺にお越しいただいて、ご講義を録画して、受講してくださっている和尚様方限定で配信していました。

一月にも小川先生のご都合に良い日にお越しいただいて、録画する予定でした。

誰もいないところで講義するよりも、私などでも聴衆になれば、多少はお話しし易いかと思ったからです。

一月の講義の前に、ご承知の緊急事態宣言が発出されました。

どうなるかと心配したのですが、今回の緊急事態宣言は、主に飲食店に関わるもので、他府県の往来の規制も無く、学校も平常通り、入学試験なども規制せずに行うという内容でしたので、小川先生お一人に、円覚寺までお越しいただいて、私たち二、三名に講義していただくことなどは、だいじょうぶだろうと思っていました。

思いつつも、一応小川先生のご意志を確認させていただきました。

すると、その小川先生のご返事を拝見して、私は自分自身を深く反省させられました。

私から、いつものように円覚寺にお越しいただいて録画する案と、Zoomなどを用いて遠隔で行う案と、それと緊急事態宣言中にお休みにする案の三つを提案したのでした。

小川先生もはじめは、自分一人が円覚寺に行って講義するだけなら、今の政府が定めた基準に外れることはないのでだいじょうぶ、円覚寺に行こうと思い、円覚寺に行くことを楽しみにしていただいたようであります。

今度の緊急事態宣言では、学校も休校にしないし、受験も行うようだから、だいじょうぶとご自身でも思われたとのことです。

ところが、小川先生の仰せでは、

十日の日曜日に私の日曜説教の動画をご覧になって、そこで、『臨済録』にある、「随処に主と作る」という話を聞いて、考え直したというのです。

この今の時期に、随処に主と作る、主体性を持つとはどういうことか。

そして、更に私の侍者日記の文章をお読みくださり、

仏教は、世の中自分の思う通りにはいかないという真理を見つめることだという言葉もご覧になって、お考えになったというのです。

そこで、小川先生は、「学校も授業をやっているから、自分の講座をやってもいい」という考えは、

自分が円覚寺に行って講座をしたいという欲望を満たすために、理由付けをしていたのに過ぎないのではないかと思われたのでした。

今の私達が、第一義として取り組まなければならないのは、感染防止にほかなりません。感染の拡大をこれ以上増やさないことです。

お互いに、感染しないよう、感染させないようにすることです。

ところが、政治家がそのことを第一義にしていないのではないかとお考えになったのでした。

会食の基準を設けたというのは、感染を防ぐというよりも、この基準内で会食すれば、世間の非難を浴びないし、自分の責任も逃れられるし、会食のためにルールのようにも思えたと言われます。

医療関係の方が早くから、医療の現場がたいへんになっていると警鐘を鳴らしながら、政府が強い措置をとらないので、結局ずるずるいつまもで引きずってしまうのだというのです。

あのGo To トラベルにしても、政府が出掛けていいと言われるから、出掛けよう、今度の基準がこうなっているから、基準内のことならやっていいのだというのでは、主体性が無いではないかということです。

仏教では、この世は無常であり、苦であり、自分の思うようにはならないのだと説いているのに、いつの間にか、自分の欲望が充足できる状態を標準にものを考えてしまい、それができなくなると、マイナスに思って被害を受けているかのように考えてしまっているのではないかとお考えになったのです。

今感染の拡大を防ぐには、ワクチンが効果を発揮するまでは、一人一人が人と接触を減らすしかないのだと思われたのでした。

そこで、今回の基準内なら、やりたいことをやっていいというのではなく、仕事の内容で人と接触を減らそうにも減らせない人もいるのだから、減らすことのできる人は、少しでも減らすしかないと思い、オンラインで講義をすることに決心されたとのことでありました。

先生のお考えには、私も深く考えさせられました。

自分で、「随処に主と作る」と話をしながら、政府の基準に振り回されていました。

主体性を失っていました。

これは、仏教の戒も問題にも関わります。

仏道の修行は、「諸悪莫作 衆善奉行」、悪いと思うことはしない、善いと思うことをするに尽きるのです。

小さなことでも少しでも心に悪いと思うことはしないように、善いと思うことは行うようにすることに尽きます。

そのために、様々な戒めや規律ができてきました。

心を良い方向へと向ける為の規律が、規律ができてしまうと、その規律を守ってさえいればいいのだという思いになりかねません。

絶えず自己を省みて、少しでも向上してゆこう、少しでも煩悩を無くしてゆこうという気持ちが薄らいでしまうことになりかねないのです。

これが、規則を作ることの弊害でもあります。

よい面も多いのですが、弊害もございます。

僧堂の修行などもそうです。

細かな規則がありますと、それさえ守っていればいいというようになってしまいます。

すると自分で工夫して修行しようという心が失われます。

和尚になるにしても、住職資格を得るために規定があります。

そうすると、その規定さえ満たしていればだいじょうぶと思って、そのあと努力しなくなってしまうこともないとは言えません。

難しい問題です。

やはりブッダの教えは自らをより所として、生涯かけて求めて工夫して実践してゆくものであったはずなのです。

自ら精進論者であると言われたのもそこでありましょう。

小川先生のご講義にしても、『宗門武庫』の一節をご講義くださったのですが、文字数にすればわずか四百字にも満たない文章なのですが、これを二時間の講義で四回かけて講義してくださいました。

私などでしたら、一時間でも時間が余るかと思う分量です。

一字一句をゆるがせにせず、厳密に意味を調べて読み込むのです。

更に、その内容に関連する様々な文献も参照して、意味を深めてゆきます。

学問というものの厳しさを垣間見る思いであります。

私などおよその意味が分かればそれでよしとするようなのとは訳が違います。

わずかなことでも疎かにしない先生の姿勢は、学問においても、日常においても一貫しているものだと分かりました。

『禅門法訓』にある言葉を思い起こしました。

「磨礱(まろう)砥礪(しれい)はその尽くるを見ざれども、時あって尽く。種樹畜養は其の益すを見ざれども、時あって大なり。積徳累行して其の善を知らざれども、時あって用いらる。義を棄て理に背く、其の悪を知らざれども、時あって亡ぶ。學者果して熟く計って之を履踐せば、大器を成して美名を播せん。斯れ今古不易の道なり」

というものです。

およその意味を申しますと、

「臼や砥石は、毎日使っていると、どれだけ減っているか気がつかない。しかし、使う内にすり減っている。植木や家畜などは、毎日どれだけ大きくなっているか気がつかないけど、いつのまにか大きくなっている。

小さな善行も毎日積み重ねていけば、必ず用いられるようになる。

義に背くような行為は、わずかなことだと思っていても、気がつかないうちに増大して、身を滅ぼすことにもなりかねない。

仏道を実践するものは、この道理をよく弁えて実践すれば、必ず大器を作すことができ、よい評判も得る、これは今も昔も変わらない道である」

というものです。

不安の中にあるから、規則や基準を作って安心を得たいのだと思いますが、逆に御仏の御手の中にある、大きな安心の中にありながら、細かな用心をしてゆきたいものです。

 
横田南嶺

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