聞くこと
相手の話を如何に聞き出すか、聞き手というのは重要な役割です。
同じ対談であっても、聞き手によって随分変わってくるものです。
まず、私が気を付けていることは、対談の前に、出来る限り、その方について学んでおくことです。
書かれた書物、文章、ネットで配信されているものを可能な限り目を通しておくことです。
そうして、その人について自分が一番聞きたいと思うことをいろいろと探しておくのです。
それ以外には、それほど気にしていることはないのです。
その結果、いろいろ学んでみて私が一番尋ねたいことが、実はその人が一番大事にしているに通じることが多いのです。
その一番大事な思いというのは、言葉には表しにくいところでもありますので、その周辺の事は書いたりしていても核心のところは、直接語っていないことが多いのです。
その的をしぼっておいて、周りから聞き出してゆこうとします。
毎月、滋賀県の高校教師をなさっている方から、『虹天』という冊子を送っていただいています。
毎月有志の方々と勉強会をなされていて、その講演をまとめて掲載されています。
今月も送っていただきました。
今号は、愛知県の中学校長をなさっている山田貞二先生という方の講演がまとめられていました。
道徳の授業において、生徒と対話することによって、生徒自身に自分で納得のゆく答えを見つけてもらうのだそうです。
それぞれ自分の考えを決めてゆくことを「納得解」というのだそうです。
それに対して、先生の方から、「こうだ」といって示すのは「絶対解」というのだそうです。
「絶対解」を押し付けるよりも、「納得解」に導くことが大切なのだということです。
それに対話の力が必要になるのです。
対話力を向上させる為に、三つのステップがあると示されています。
それは、「傾聴」と「復唱」と「オープンクエスチョン」の三つです。
第一の「傾聴」では、相槌、うなずき、賞賛の三つで共感を生み出すのだそうです。
確かに相槌を打つ、うなずいて聞く、褒め称えることは大事であります。
二番目の「復唱」というのは、オウム返しのことです。相手の言われたことを、そのまま「~ですね」と復唱します。そうすると相手の自己肯定感を高めるのだそうです。
三番目が「オープンクエスチョン」といのですが、これは思考を広げ深める質問です。質問をすることによって広がりを持たせていくのだそうです。
その具体例が挙げられていました。
「何」ーどういう意味ですか
「詳」ー詳しく教えてください
「例」ーたとえば?
「理」ー理由を教えてください
「本」ーほんとうですか
「訳」ーその訳を教えてください
「逆」ー逆に~は?
「確」ー確かめたいことがあります
というものでした。
「どうしてそう思ったの」「どんなふうにやろうとしているの」「なぜこんなやり方を考えたの」というように聞いてあげることなのです。
「共感」「オウム返し」「オープンクエスチョン」の三つというのは、なるほど大切なことだなと、私も深く納得しました。
いろんな人にあって、話を聞くことが多いのですが、単に聞くことは大事だというだけではなく、共感して、時に復唱してあげ、更に聞いて深めてゆくことを学びました。
相槌の例として、
「うんうん「なるほど、なるほど」「わかる、わかる」「そうなんだなあ」「へえ」「だよねえ」「それで、それで」「そっかあ」などがあげておられました。
オープンクエスチョンの例としては、
「~というと?」「どんな感じ?」「もう少し詳しく教えてください」「例えば?」「具体的にどんな感じ?」「どんなイメージ?」「エピソードを教えてください」「なんでもいいですよ」「ほかには?」などです。
さすがに長年教育の現場で培われてきたことですので、深いものです。
それをわずかに時間で学べるというのは、有り難くも贅沢であります。
今後の対話の参考にしたいと思ったのですが、私が対話で一番大切にしていることは、なんといってもまず対話を楽しむことであります。
楽しく話していると、一番いろんな話が聞けるのであります。
横田南嶺