久しぶりの授業と感動の対談
思えば二月に講演して以来なのです。
四月の入学式には、出席してお祝い述べるべく準備していましたが、直前になって京都市内の大学で新型コロナウィルス感染者が出て、状況が一変しました。
入学式は無くなり、前期の授業はすべてオンラインとなって、大学に登校せずにいました。
花園大学では後期、対面の授業とオンラインとをそれぞれ並列して行うことになり、私の担当している「禅とこころ」の講座も、今まで公開講座だったところを、学生のみにして、しかも教室を大教室に変えて、間隔を十分にとって生徒だけで行うことになったのでした。
そこで二十六日に僧堂の大摂心を終えて、二十七日に上洛したのでした。
大学に行く前に、先日知人から南禅寺の柏槇の様子をうかがいましたので、気になって立ち寄ってみました。
すくすく育っている柏槇を自身の眼で見て安心して、大学に参りました。
久しぶりの登校なので、学長、学園長など、大学側からの種々様々の報告を聞いて、その後大教室で講義をしました。
学生ばかりでしたので、学生向けに、主に「調五事」をもとにして、「己こそ己のよるべ」と題して話をしました。
久しぶりに学生さんたちの姿に接するのは嬉しいものです。
また学園が創立百五十周年となる記念事業で、私が命名した新校舎が既に完成していてそれも拝見しました。
楽道館と名付けたのでした。
この校舎は、後のち学生会館として使うということなので、堅苦しい名前よりも、道を楽しんで欲しいという思いでつけました。
講義を終えて、午後からは、花園大学教授である佐々木閑先生と、対談をさせていただきました。
佐々木先生は、コロナ禍にあって、四月の初めからYouTubeでの授業を始められ、授業の始まった今も続けてくださっています。
私もいつも楽しみに拝聴しています。
佐々木先生とは、今年の一月に都内の大手町でともに講演し、食事もご一緒したのでした。
何度もお目にかかっており、楽しく対談できました。
約二時間、私が聴き手になって、先生が浄土真宗のお寺に跡継ぎとしてお生まれになり、大学では科学を学ばれ、そののち仏教学を修められ、更に臨済宗の大学である花園大学で教鞭をお執りになるという半生を語っていただきました。
とりわけ先生は、「釈迦の仏教」といって、お釈迦様の本来の仏教を説いて下さっています。
お釈迦様の教えと、浄土のお念仏と、そして禅という、同じ仏教とはいいながら、大いなる異なるものが、先生ご自身の中でどのように統合されているのか、うかがうことができました。
私も聴いて深く感銘を受けました。
そして、このコロナ禍にあってYouTubeをおはじめになった、その思いやご苦労もうかがいました。
いろんな話を伺いながら、先生は二度ほど目頭を熱くされました。
私も聴きながら、涙がにじんできたのでした。
感動の対談となりました。
僧堂の摂心を終えて、上洛して講義に対談と疲れるかと思いましたが、その疲れを凌駕する感動を得ることができたのでした。
いずれまた、YouTubeにて公開させていただきます。
佐々木先生の感動のお話に、乞うご期待。
横田南嶺