呼吸の工夫
呼吸には四種類あると書かれています。
それは、「風(ふう)」、二に「喘(ぜん)」、三に「気(き)」、四に「息(そく)」の四つです。
この中の前の三つは調っていない呼吸で、最後の「息」がよく調った呼吸です。
「風」というのは、鼻の中に息に出入りの音がする呼吸です。スースー、ハーハー音がするのです。
次には、「喘」ですが、音はしないのですが、出入りの息に乱れがある呼吸です。早くなったり遅くなったり、ひっかかりがあって、不規則で落ち着かない呼吸です。
それから「気」というのは、音もしないし、リズムにも乱れがないけれども、まだ出入りの呼吸がなめらかではない状態です。
最後の「息」が、音もしなくなり、つっかえることもなく、静かに吐き静かに吸って、息をしているのかしていないのか分からないような呼吸です。
こういう呼吸が、体を安穏な状態に導き、さらに心にも喜びを感じさせてくれるのです。
「風」の呼吸を続けていると、心が散漫になってしまいます。
「喘」の呼吸をしていると、心が閉塞状態になってしまいます。
「気」の呼吸をしていると、疲労を感じてしまいます。
「息」の呼吸のみ安定をもたらします。
ではどうしたら、「風」「喘」「気」が「息」になってゆくのかというと、経験上では、見つめていることが一番です。
気づいて見つめることです。
「ああ、今自分の呼吸に音がしているな」、「まだ乱れがあるな」、「なめらかになっていないな」と気づいて、ただ見ていると、自然と静かに調ってきます。
それだけでは十分ではないと思う方には、『天台小止観』には次の三つの方法が説かれています。
一つには、心を身体の下のほうに落ち着けること。臍下丹田、おへその下に心を置くことです。
二つには、身体をゆったりと解き放つこと。身体のどこかにこわばりがあるものです。それを観察するのです。解きほぐそうとすると力みになってしまいますので、そこにこわばりがあるなと気づくだけで十分です。
三つには、息が身体全身の毛穴からなんの妨げもなしに出入りしていると思うことです。
皮膚呼吸というのは、誰しも無意識に行っています。なんの滞りもなく行われているのです。意識しようとしまいが、身体全身でなめらかな呼吸しているのだ、呼吸できているのだと思うことです。
こういうことをしていると、段々呼吸が落ち着いてきます。
その静かになった呼吸を、数えていくのが数息観であります。
横田南嶺