バリデーション
題が、「バリデーションを念頭に」です。
バリデーション?
カタカナ言葉に弱い私には、全く聞いたこともない言葉です。
読み進めますと、はじめにコロナ禍に於ける様々な問題を取り上げています。
鎌田先生が外来で接する多くの方々が、自粛のために活動量が減って、体が虚弱になっていること、人と接することが制限されるので、認知機能が低下していること、それからコロナ疲れということが見られると書かれています。
実際に外来の患者さんを診ていて感じることだそうです。
それから、鎌田先生は、自殺の増加も気になさっています。
七月までは前年と同じ程度だったのが、八月には、全国で昨年の16パーセント増なのだそうです。
原因ははっきりしませんが、コロナによる影響も少なくないのではと指摘されています。
そこで鎌田先生が取り上げられているのが、「バリデーション」であります。
これは、認知症ケアの技法だそうです。
認知症の人を価値ある人として接することによって、認知症の人の不穏な行動が落ち着いてくるというのです。
人を価値ある人としてとらえるバリデーションの基本は、
「傾聴する」、「共感する」、「受容する」、「誘導しない」、「ごまかさない」という五つなのだそうです。
この五つを念頭に置いて周囲の人に接すると、良好な人間関係が築けるように思うと鎌田先生は仰せになっています。
鎌田先生は、どんな人であっても、「価値ある人」として接することを心がけてきたそうです。
そのことによって、病院内の人間関係がうまくいったそうです。
このバリデーションを上手に使うと人間関係が円滑にゆくというのです。
誰でも「価値ある人」として認めるということは、常不軽菩薩の心にも通じます。
どんな人も仏心を持っていて、仏性があるということは、これ以上ない価値のあることであります。
単にそう思うだけではなく、実際に傾聴、共感、受容などと行動することが大事なのでしょう。
よく聞いてあげて、「そうだね」と共感して、相手を受け容れてあげることなのです。
コラム記事の最後に鎌田先生は、もう一つ大事なことがあるとして、「自分自身も価値ある人と考えること」だと仰っています。
自分の心の声を傾聴し、それを受けとめながら、自分が価値ある人間だと肯定的にとらえることが大事だと指摘されています。
そうすることによって、コロナ疲れを解消できるというのです。
これはこの頃言われているセルフコンパッションに通じます。
常不軽菩薩の行を徹底させるには、他人の声も自分自身の声をも、よく聞いてあげる、共感して受けとめてあげることが肝要だと学びました。
横田南嶺