愉快に生きる道
「……人間は、この世の中を愉快に過ごそうと思ったら、なるべく人に喜ばれるように、さらには人を喜ばすように努力することです」
という言葉です。
人間にはどうしても我欲があります。
もちろんのことこの我欲が無ければ生きることができないのですが、この我欲の為に苦しむことになるのも道理であります。
我欲を満たそうとばかりしていると、思うようにはならず、結局苦しむことになります。
自分の利害だけを考えているようではダメになってしまいます。
常に自分の利害を中心にして人のために尽くすということが分からない人間になってしまうと、苦しみはいつまでもやむことがありません。
そこでこの世を愉快に生きようと思えば、森先生は、
「つまり自分の欲を多少切り縮めて、少しでも人のためになるように努力するということです」
と説かれるのであります。
具体的には、
「一つの林檎を弟と半分分けにして、二人が半分ずつ食べるのもむろんよいことでしょうが、時には「今日はお前みんなおあがり。近頃お利口になったごほうびさ」とでも言ってみたら、どんなものでしょう」
というのです。
更に「半分ずつ分けて食べたら、それはただの林檎の味 – ところが弟にみんなやって、弟がにこにこしながら食べるのを見て喜ぶのは、まさに天国の林檎の味と言うべきでしょう」
と説かれています。
人生を愉快に生きるには、自分さえよければ、自分の利害中心に考える習慣を打破しないといけません。
そのためには、まずお互いが自分の力だけで生きているのではなく、他の力によってこそ生かされているということを感じることであります。
人が喜んでいるのを見て喜ぶという心を持ちたいものです。
そんな気持ちが自他一如の心境にほかなりません。
横田南嶺