ご命日
毎年、この日には先生のお墓参りに行くようにしています。
先生は平成二十一年にお亡くなりになりましたので、今年で十一年になります。来年には早くも十三回忌を迎えることになります。
十一年前の七月、お亡くなりになる三日前に、近くの喫茶店でご法話をされていました。
そのあと具合が悪くなられてご入院になり、お身内の方に看取られて、二十九日にお亡くなりになったのでした。
満百一歳でした。
「生涯修行、臨終定年」と仰せになっていました通り、最後の最後までお説法を続けておられたのでした。
最後のご法話の録音を後になっていただくことができましたが、些かの衰えも感じさせないご法話でありました。
書斎には、まだまだこれからお仕事を続ける準備をなさっていたとうかがいました。
十一年前のこの日には、泰道先生がもう危篤状態にあると聞いていながら、ちょうど白山の龍雲院に所用があって上京していて、訃報は龍雲院で聞いたのでした。
龍雲院から三田の龍源寺までは、都営三田線で一本でゆけますので、すぐさま弔問に駆けつけたのでした。
まだお休みになっておられるかのようなご遺体に、しみじみ読経させていただいたのでした。
昭和五十五年にお目にかかって以来、数多くの教えをいただきました。
大学に入学した時には、関東に知人がいなかった為に保証人にもなってくださいました。
上京してどこで坐禅していいかわからずに、どこに行けばよいでしょうかとうかがうと、即座に「坐禅するなら白山道場の小池心叟老師のところにゆきなさい」とご指導いただきました。その一言がご縁になって、白山道場で出家することになりました。
お墓にお参りしてから、龍源寺にもお参りして読経してきました。
龍源寺の本堂に入ると、学生の頃が思い出されます。
ご恩を思い起こし、自分を初心に返してくれる墓参でありました。
横田南嶺