今考えていることが人生のすべて
毎週日曜日の毎日新聞『日曜くらぶ』に連載の海原純子先生の「新・心のサプリ」には参考になる話がいつも載せられています。
二十六日には「負の波にのまれぬよう」という題でした。
新型コロナウイルス感染拡大が続くなかで、
自分だけがよければという行動や他者に対する偏見や差別的な言動を耳にすることが多いと嘆かれています。
感染した人は、感染したことを責められ、家族にも迷惑が及ぶことを心配するという二重三重の心の重荷を負わなければならず、どんなに大変だろうと心が痛むと書かれています。
「人を責めて誰かを悪者にするというこうした風潮が、気分の波として世界中に伝わっていくから、
新型コロナ感染拡大も怖いが、悪意や利己主義という気分の伝染も恐ろしいと思う」
と懸念されています。
そして最後に、
「人は今、考えていることが人生のすべてになる」
心理学者のダニエル・カーネマン博士は言っている。
確かにその通りだ。今晩のおかずを考えているときは他のことは考えられないし、コロナのことを考えているときはコロナのことばかりを考える。
不安や怒りの対象をみつけ、非難していると人生が怒りで埋めつくされる。
というのです。
これなどは実にその通りなのです。自分の今の心が、自分の人生を決めてゆくのです。
そこで海原先生は、
「ネガティブな考えがうかんだ時、その思いをストップさせ、方向をかえるすべを、私たちは習得する必要があるだろう。
ほんの一瞬、自分の心を平静に保ち、ネガティブな波にのみこまれない方法をみつけていくこと、
そして人に対するあたたかさを伝える波にかえていくことが今、必要だと思う。」
と締めくくられています。
ネガティブな考えが浮かんだとき、その思いを止めて、方向を変えるすべとは、一番いいのは、観音さまを念じることでしょう。
仏像があれば、拝んで「南無観世音菩薩」と唱えることです。
観音さまのお写真でも結構です。手を合わせて「南無観世音菩薩」と唱えます。
もちろんのこと、延命十句観音経を唱えることができればなおよいでしょう。
坐禅も同じでなのでありますが、坐禅の場合は馴れていないと、坐禅の中でまた今までの思考を引きずって、考え続けてしまうことがあります。
サッと思いを切り替えるのには、手を合わせる動作などを加えて、言葉を唱えることが有効であります。
「祈り」の動画をご覧になって、いろんな方から感想をいただいています。
なかには毎朝、あの動画を見ながら一緒に延命十句観音経を唱えるようにして、朝の習慣にしているという方もいらっしゃいました。
観音さまを念じると、負の思考を止めるだけでなく、心が落ち着いて思いやりや慈悲の心も自然と湧いてきます。
これは一石二鳥なのです。
こういうよい習慣を身につけておくと、負の思考にのみこまれない歯止めになります。
負の思考ばかりに、のみ込まれないように注意しましょう。
横田南嶺