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臨済宗大本山 円覚寺

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2020.04.18
今日の言葉

悲しみ

四月十七日は、前管長足立大進老師の四十九日忌にあたりました。

折からの新型コロナウイルスの影響で、ほんの数名でひっそりと読経をすませました。

二月の末と三月の末と、足立大進老師と恩師後藤牧宗和尚と二人の師を亡くしました。

それぞれご高齢でもあり、かねてより覚悟をしていたものの、

四十九日過ぎた頃になってくると、ふと何かの折りに悲しみが湧いてくることがあります。

そんな時には、真民先生の詩を思います。

 

 かなしみ  

  

なんとも言えぬかなしみが

潮のように満ちてきて

じつと寝ていられぬときがある

なんとも言えぬかなしみが

潮のように引いていったあと

まもられている自分に涙することがある

 (『坂村真民全詩集第一巻』より)

 

まさしくその通りだと思うのです。

五木寛之先生の『自力と多力』(ちくま文庫)を読んでいると、

「悲しみを癒やすものは、悲しみである」

という章がありました。

五木先生の知人が入院されたとき、その方と同じ病院に二十歳そこそこの女性が入院したそうです。

がんを患い、副作用に苦しまれていたといいます。

その若い女性が毎晩窓から見える東京タワーを見ながら、しくしく泣くのだそうです。

その理由を聞いてみると、

 

「死は怖いのですが、それよりももっと納得できないことがある」

 

というのです。

それは

 

「どうして自分だけが、こんなにきれいな夜景のなかで、苦しまなければならないのか、その理由がわからないことが苦しくて悲しいのです。

 私と同じ若い人たちは、きっといまごろ、デートをしたり、コンサートに行ったり、本を読んだりしているのでしょう。

 なのになぜ自分だけが、抗がん剤治療のために髪も抜けて、吐き気に襲われながら、窓の外の東京タワーをみていなければならないのでしょうか」

 

という、深い悲しみなのです。

 

こんな女性の質問にどう答えたらいいのか、五木先生は考え続けられたと書かれています。

考え続けた結果、実際にその若い女性を前にしたとき、言うべき言葉など何もないと思い至ったといいます。

 

「ただできることと言えば、かたわらにいて、ともに泣いているだけのことです。何も言わない。

じゃまだといわれれば、だまって去るしかない。」

 

というのであります。

これが、「慈悲」の「悲」なのだと五木先生は説かれています。

そこでこの一章に最後に、

 

「東京タワーの見える病室の女性を、もしわずかでもやわらげるものがあるとすれば、それはやはり悲しみでしかないのかもしれません。

 悲しみの暗闇のなかで、一厘でも苦しみをやわらげるものがあるとすれば、ともに悲泣することしかないのではないでしょうか。」

 

と結んでおられます。

今の悲しみが、将来誰かの悲しみを癒やすことになれる時がくるのであろうかと、四十九日の法要を終えて一人考えています。

なぜか庭の牡丹の白い花も、悲しく咲いているように見えます。

 

横田南嶺

 

 

悲しみ

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