生き方を見直す
三月二十八日の読売新聞に、養老孟司先生へのインタビュー記事が載っていました。
養老先生は、解剖学者であり、たくさんのご著書もあって、いつも示唆に富むご見識を示してくださっています。
円覚寺で講演していただいたこともあり、私も他のお寺で対談をさせていただいたこともあります。
新型コロナウィルスの究明が進みつつあるように見えるという記者の問いかけに対して、
養老先生は
「みんな生き物を軽く見ているんだよ。
特にコロナウィルスのように微細なものは、構造はわかっても、人間にどう影響するかは未解明です。」
と述べておられます。
まだまだ未知のところがあるというのです。
人間でも、同じウィルスに感染しても、体質や遺伝的に亡くなる人もいれば、元気な人もいる。それが生物多様性だと仰せになっています。
そのような多様性という視点からみれば、
「人間には都合のよくない新型コロナも多様性の一つ。登場してしまったからには、共存するしかない。」
というのです。
多様性という視点でみると、人間中心、自分中心の考えでは対応できなくなります。
そこで養老先生は、
「ただ、世の中も自然も、思うにまかせぬものですから、起こったことはしょうがない。その結果をいかに利用し、生き方を見直すかで先行きが違ってくる。」
と指摘されていました。
たしかに生物多様性という視点で生物の歴史をみると、実にさまざまな生物が登場してきたのでしょう。
人類が生まれてからも、過去をさかのぼれば、いろいろな細菌などもあらわれて、その中を生き伸びて今日に到ったのでしょう。
ですから、きっと今回の新型コロナウイルスにしても、なんらかの形で収まってゆくのだろうと思います。
今すぐに「共存するしかない」と言われてもためらわれますが、
生物は多様性であること、その中で生きるしかないこと、
これからどう生きたらよいか、生き方を見直す機会にすることが大切だと感じました。
横田南嶺