今日の出来事
悲しみと哀しみ
花園大学の橋本和明先生から、臨床心理学の冊子をお送りいただいて、先生の玉稿を拝読しました。
その中に、「悲しみ」と「哀しみ」について、深い洞察がなされていて感銘を受けました。
漢字「悲」の語源について、「非」には羽が左右反対に開いたあり様が表され、両方に割れるという意味だそうです。
それが、「非」+「心」となって、心が裂けるということ、胸が裂けるような切ない感じが「悲しみ」の本義だというのです。
それから、「哀」の語源については、「哀」の字は、「口」と「衣」で成り立っていて、「口」を「衣」で上と下から挟んでいるのです。
そこから「衣」には包んで隠すという意味があり、「口」+「衣」で思いを胸中に抑え、口を隠して悲嘆に暮れる様子を表すのだそうです。
橋本先生は、
「傷ついた人を目の前にすると、本人も傷を語れないし、
こちらもその人の心情を容易には言葉にできない。
そのため、われわれは口を衣服で覆いながら嘆くのである。」
と書かれていました。
禅語の
「君看よ、双眼の色、語らざるは愁い無きに似たり」
を思い起こします。
誰しも、人には言えない、言葉には表せない悲哀を胸に隠して生きているのです。
こんな文字について学ぶだけで、誰しもみなそんな悲哀を抱いているのだなと分かります。
その事が分かれば、お互いに思いやることが出来るはずなのです。
画像は、坂村真民記念館で購入してきた絵はがきです。
横田南嶺