今日の言葉
初七日を終えて
三月六日は、足立大進老師の初七日に当たりました。本山の和尚さんたちと僧堂の雲水とでお勤めをしました。
足立老師は、日本の仏教が葬式仏教になっていることを常に憂いておられ、自分の葬儀は無用であると仰せになっていました。
晩年はお伺いするたび毎に、
「ワシが死んでも葬儀はいらぬ、数人で荼毘にして、荼毘にしてから大悲呪を一巻読めばいい」
と仰せになっていました。
いくらご遺志に沿おうと思っても、何もしないというわけにはゆかず、円覚寺の山内のみにて密葬を行いました。
密葬を終えてから、諸本山に通知を出しました。
それでも、どこかから話を聞いてか、密葬に駆けつけてくださった方もいらっしゃいました。
静岡市の臨済寺僧堂師家の無底窟 阿部宗徹老師も、わざわざ密葬に駆けつけてくださり、本堂から出棺をご丁寧にお見送りくださいました。
老師のお心には、有り難く感謝しています。
密葬の後に各本山に知らせましたので、初七日には京都から建仁寺の管長である小堀泰巌老師がお参りにみえてくださいました。
小堀老師は、長年建長寺で修行されていて、鎌倉ともご縁の深い老師です。ご丁重に読経し焼香してくださいました。
また京都裏千家の家元、前家元大宗匠からも献花が届きました。
内々で密葬を勤めますと、そのあと次々とお参りに見えてくださったり、お供えが届いたりします。
それぞれのお心が有り難く、その応対や礼状を書くことなどに追われていると、肉身の師を亡くした悲しみも紛れてしまうものです。
横田南嶺