心の豊かさ
毎月滋賀県の高校の教師をなさっている方から、冊子を送っていただいています。
その先生は、毎月勉強会をなさっていて、その講演録が掲載されています。
今回も、「心豊かに生きるヒント」という題の講演録が載っていました。
その冒頭に、「心豊か」とか「幸せ」というのは、誰かを喜ばせたり、誰かの役に立ったりした時に戻ってくるものなのかなという言葉がありました。
これは、実に真理を表しています。
数日前の日経新聞のコラム「春秋」に、エルトゥールル号事故の話が紹介されていました。
「1890年秋。オスマン帝国の使節団を乗せた軍艦「エルトゥールル号」が和歌山県沖で台風の直撃を受け、遭難した。荒れ狂う海に投げ出された乗組員のうち69人を串本町大島の住民が救助し、献身的に看護した。トルコはその史実を教科書に載せ、後世に語り継ぐ。」とありました。
和歌山県串本の大島の住民たちは、見ず知らずにトルコの人たちを懸命に助けました。
自分たちは、決して裕福といえるような暮らしではなかったと思われますが、
目の前にいる人たちが困っているのを見過ごして、自分たちだけの幸せなど無いのだと分かっていたのだと思います。
小泉八雲は、『日本の面影』の中で、
「日本人のように、幸せに生きていくための秘訣を十分に心得ている人々は、他の文明国にはいない。
人生の喜びは、周囲の人たちの幸福にかかっており、そうであるからこそ、
無私と忍耐を、われわれのうちに培う必要があるということを、
日本人ほど広く一般に理解している国民は、他にあるまい。」と述べています。
明治の頃の日本人の幸せ観をよく表現されています。
今はどうでしょうか、豊かさとは、自分のものをもつこと、自分が幸せになることだと思われていることが多いのではないかと察します。
「心の豊かさ」とは、何か考え直してみることが大事かと思います。
横田南嶺