ごんぱち
本日は節分。
さて、「ごんぱち」の言葉を聞いて、何であるか分かる人は少ないのではないかと思います。
昨日の毎日新聞のコラム「季語刻々」に
「巻鮨の 芯はごんぱち 節分会」という句が紹介されていました。
坪内稔典先生の解説によれば、この句の「作者は三重県南牟婁郡に住む」といいます。
そして「ごんぱち」ですが、坪内先生は、「イタドリのことらしい」と書かれています。
「タラやイタドリの芽が作者の住む地では節分の付き物らしい」
との説明も。
「ともあれ、イタドリの芽を芯にした巻きずし、食べてみたい。こんな巻きずしこそが春を呼ぶ縁起のよいすしかも」
と結んでいます。
三重県南牟婁郡というと、紀宝町や御浜町があって、私のふるさとの新宮市の隣りであります。
そうなのです、私の田舎では、この「ごんぱち」をよく食べていました。
子供の頃、春先になると山に入っては、「ごんぱち」を取ったのです。
どうも「ごんぱち」と呼ぶのは、和歌山でもごく限られた南の一部らしいので、私も関東に来てからというもの、この語を聞いたことがありませんでした。
すっかり忘れ去っていたのが、新聞の記事で見つけて、うれしくなりました。
「ごんぱち」の一語で、ふるさとの山々、春の山菜などが、思い浮かんできました。
ふるさとに居たのは十八才までで、すでに鎌倉には三十年になろうかという長い年月を住んでいるのですが、やはり身体には、まだふるさとの思い出が残っているのでした。
立春を迎えるにあたって、春を感じる懐かしい一語に出会い、縁起のいい思いであります。
横田南嶺