うれしいこと
岩波書店から、『禅海一瀾講話』が重版になるという話をいただきました。
『禅海一瀾講話』は、釈宗演老師の百年遠諱の記念に復刊したのでした。
これは、釈宗演老師のお師匠様にあたる今北洪川老師の著である『禅海一瀾』を釈宗演老師が講義されたものです。
もとは大正七年に発行されたものを、このたび一昨年の秋に復刊したのです。
岩波書店としては、学術的にもきちんとして出して欲しいとのことでした。
そこで、もとの本には誤植や誤字が多かったので、駒澤大学の小川隆先生には、多大な労力を費やして綿密な校正の労をおとりいただいて、更に詳細な語注をつけていただきました。
この本を上梓できたのは、ひとえに小川先生のお力のおかげであります。
それから更に私にも、学術的な解説を書くようにとのことでありました。
さて、学術的とはほど遠い暮らしをしています私にとりましては、これはかなり難しい依頼でありました。
そこで一昨年、この原稿を繰りかえし読んで、私としても校正に携わり、解説も苦労して書き上げたのでした。
とても学術的とは言いがたいものですが、学術のようなふりをして書いたのでした。
なにせ七百ページを超す大著でありますので、よく「読むのが大変だ」と言われましたが、私などでもこれを出す為に何度も繰りかえし読んだのです。
一読くらいは、なんでもないことです。
しかしながら、重版になったことはうれしい事ですし、重版になるということは、こういう本を手に取って読んでくださる方が大勢いらっしゃるからなのであります。
そうすると、まだまだ世の中見捨てたものではないなとうれしく思うのであります。
まだお読みになっていないという方は、是非とも手に取って一読することに挑戦してみてください。
横田南嶺