今日一日笑顔でいよう -その2-
一月十二日、ご自身のお寺で、五人展『山雲海月』を催されていて、その最中にお亡くなりなった和尚の最後の様子を、知人が詳しく知らせてくれました。
私も、最後の法話が、どんな内容だったのかと気にかかっていました。
和尚の「遺作」となった法話は、一時間弱におよんだそうです。
そして最後には、あたかも禅僧が一喝するような、大音声で次のように締めくくられたそうです。
「山雲海月が、いまここ、
おまえは笑ってていんだよって
言ってくれてるんです。
どうですかみなさん
今ここに徹底したらね
なにがあってもだいじょうぶなんです
なにがなくてもだいじょうぶ
いまここ 山雲海月 私
今日一日笑顔でいよう
山雲海月がわたし
わたしが山雲海月
みんな笑顔になって
笑ってるんだよ」
というのでした。
山雲海月は、この五人展の題であります。大自然であり、大いなるいのちの営みでもあります。
この法話をされた晩に、大人数で行われた五人展の開催を祝う宴会の司会までされたらしいのです。
しかしながら、その晩に 体調をくずされ 病院に救急搬送されましたが、危篤となられました。
更に、和尚は痛み止めを打たれて、ご希望によりご自身のお寺にもどられて、禅僧らしい最期を遂げられたというのでした。
「坐脱」と申しますが、坐禅をして、坐禅の姿のままで息を引き取られたそうなのです。
この和尚とは、数年間のご縁でしたが、お目にかかったときから、いかにも禅僧らしい方だなと思っていました。
病を得てからのお言葉やお姿に接して、より一層尊敬の念を深めていました。
ご最期の様子をうかがうと、もはや完全に脱帽です。
まさしく「真の禅僧」でありました。
このような和尚と同じ時代を生きられたことを誇りに思います。
わずかの間でしたが、和尚とご縁をいただいたことにこころから感謝します。
もれ聞くところによれば、和尚は、門前の地域のみなさんにとても愛され、地域の誇りのように尊敬されていたそうです。
本当に尊い「真の禅僧」なのでした。
横田南嶺