『こころの深呼吸』
海原純子先生は、心療内科医の先生です。毎週毎日新聞の日曜版に、「心のサプリ」を連載されています。
これが毎回、学ぶことが多くて私も楽しみに拝読しているのです。
小欄でも、最近「クリスマスの季節」を紹介させてもらいました。
一年にわたって「心のサプリ」を愛読させていただいたお礼に、『円覚』正月号などをお送りしましたところ、お礼状と共に海原先生の新刊本『こころの深呼吸』をお送りいただきました。
海原先生は、円覚寺の夏期講座にも講師をおつとめいただいたこともあり、それがご縁となって、海原先生のご紹介で日本肺がん学会や世界肺がん学会でそれぞれ講演をさせてもらうこともありました。
そんなご縁もあって、折りに触れてこちらから新著を送ったり、海原先生から本を送っていただいたりしています。
今回お送りいただいた『こころの深呼吸』も良い本です。
目次をみますと、
第一章は、「少し疲れたなと感じたら」と題されていて、「体がゆるむと心もゆるむ」、「立ち止まって空を見る」、「鼻呼吸倍呼気法でリラックス」、「にっこりの効用」など、少し疲れたと感じた時の処方箋が綴られています。
どれも、日常の暮らしの中で、少し気をつければできることばかりです。
少し疲れたなと感じたところで、早めに処方することができれば、深刻にならずにすむのでしょう。
この本の第八章にご自身のことが綴られています。
海原先生ご自身、医学の道を志し、医師となりクリニックを開設してはたらいていたところ、体調を崩され苦労なされた時期があったようです。
検査をしてもなかなか不調の原因が分からず、先生の言葉によると「最終的にアメリカの診断で長い間の緊張とがまんによって、顔面神経のマヒなどを含め、体が影響を受けていることがわかった」そうなのです。
更に本書で「弱音を吐かない、怒っても悲しくてもがまんする―それは医師としての自分が生きる世界で一人前に扱ってもらうには必要だったが、そのつらさを緩和する場がなかったのだ。」と書かれています。
そんな辛さを乗り越えて、ただいま医師としてご活躍であり、文筆でもその才能を発揮されています。
それだけに、説かれる言葉には、深く納得させられるのです。
驚いたことには、このたびは新著と共にCDも同封されていました。
海原先生のご自身のCDでした。先生はジャズ歌手としてもご活躍なのであります。
いただいたお手紙には、「おききいただけたらうれしいです」と書かれていましたが、この年末には聞いている時間もなく、そもそもCDを聞く機器も持ち合わせていないのです。(たぶん聞いても私には分からないでしょう)
また、更に驚いたことには、ジャズライブのチラシも入っていました。
こちらは「ジャズがお好きな方がいらしたら、ご紹介くださいませ」とありますので、はなから私は対象外であるのですが、多方面でのご活躍には恐れ入ります。
私のような者でさえ、いろんな事をやっていると、「よくそんな時間がありますね」と言われるのですが、上には上がいるもので、海原先生など心療内科医だけでもお忙しいでしょうが、執筆に歌にとよく時間がとれるものです。
きっと、そのどれもが楽しんでやっていられるのでしょう。
ストレスをためないようにしておられる秘訣が、この『こころの深呼吸』に満載です。
ご自身で実証されている事ばかりですので、間違いないでしょう。
お勧めです。
横田南嶺