『坂村真民箴言詩集 天を仰いで』(2)
坂村真民先生の三女である西澤真美子さんから、愛媛新聞を送っていただきました。
十一月十三日付けの愛媛新聞に、
円覚寺の中興である大用(だいゆう)国師、誠拙周樗(せいせつしゅうちょ)禅師のことが紹介されていました。
今年は、大用国師二百年遠諱の年に当たります。
円覚寺では、大用国師の報恩の為に、数年前から様々な記念事業を繰り広げてまいりました。
今年は特に、三月に関東の僧堂の雲水達を招いて、円覚寺僧堂において報恩大摂心を催しました。
更に四月には、京都から相国寺の管長、天龍寺の管長、建仁寺の管長を招き、鎌倉の建長寺の管長、それにご縁の深い方広寺の管長様方や、ご縁のある僧堂の老師様方をお招きして、二百年大遠諱法要を営みました。
そのあと引き続いて、円覚寺派寺院の檀信徒およそ千三百名に戒を授ける、大授戒会を行いました。
その後、日本橋の三井記念美術館において、円覚寺展を開催したのでした。
それらすべての行事を無事終えて、ホッと一息というところのですが、大用国師のふるさと愛媛で、このように国師のことをとりあげてくださるのは、実に有り難い思いであります。
この新聞記事をわざわざ送ってくださった、西澤真美子さまには、深く感謝します。
西澤様には、坂村真民先生のご縁でお世話になっています。
折から、坂村真民先生の『坂村真民箴言詩集 天を仰いで』も十五日に発売されました。
この本の巻頭には、私が「本書を推薦します」と題した拙文を書いています。
以下に、その一部を紹介して、お勧めさせていただきます。
真民先生は、八歳で父を亡くし、その父の遺骨であるのどぼとけに毎朝、お水をお供えされました。
毎朝、共同井戸からまだ誰も汲む前の水を汲んできたといいます。
……亡き父ののどぼとけにお供えするために一番の水を汲みたいという一途さ、どんな日にも休むことをしないひたむきさ、そんな純粋さこそが、真民詩の原点であると思っています。
人は誰しも、そのような純粋さをもっているのでしょう。
しかし、多くの人は、成長するにつれて、いつしかそんな心を失ってしまいます。
しかし真民先生は、この八歳の頃からの一途さ純粋さを、九十七歳で亡くなるまで生涯保ち続けられたのであります。
『坂村真民全詩集』第一巻の冒頭にあり、本詩集の初めにも引用されている
「いつも澄んで 天の一角を見つめろ」という思いを生涯貫かれたのです。
そのことが、真民先生の何よりの魅力であり、余人にはまねできないところでもあります。
それには、生涯にわたって自らを励まし、戒め、「いまのままではダメになる」、「まだまだ」と「こつこつ」努力を続けられたのであります。その自らを戒め続けた詩が、この度の『箴言詩集』にまとめられています。
……禅語に「源深ければ流れ長し」とありますが、純真に深く掘り下げたからこそ、長く多くの人の力になり、弘まっていったのでしょう。
……人さまにお勧めしたいのはもちろんのことですが、まずはこの『坂村真民箴言詩集』を手元に常において、私自身が自らを戒めなければならないと痛感しています。
横田南嶺