「珊瑚を撃砕す」
珊瑚を撃砕す
中国の『晋書』にある話です。石崇という人は、同じく大金持ちだった王愷という人と
金持ち振りを競い合っていました。
王愷が巨大な珊瑚を入手して石崇に自慢すると、石崇はその珊瑚を鉄の如意で叩き壊して
「手が滑った」などと言いました。「わしのものを妬んだのだ」と言われた石崇は、
もっと巨大な珊瑚をいくつも取り寄せてみせて「好きなの持ってけ」と言ったといいます。
こんな金持ち比べはどうでもいい話でありますが、金持ちが珊瑚を大事に抱えているように、
お互いは分別知識、我見我慢を大事に抱えているのであります。
そんな思い上がった見識を、粉々に打ち砕くのが禅の修行の第一歩であります。
(平成30年10月21日 横田南嶺老師 入制大攝心 『武渓集提唱』より)