ある人が、政黄牛に問いました。あなたは、禅師と呼ばれているのに、
どうして禅を説かないのですかと。
政黄牛は答えました。「私は、無駄な言葉を弄ぶことが好きではないのだ。
言葉はどうしても回りくどくなってしまう。言葉に表してしまうと、
すでに真理とは隔てが出来てしまう。それよりも、大自然が真理を説いているではないか。
この大自然は、絶え間なく、然も尽きることなく、真理を説き続けているではないか」と。
この政黄牛は、明月の晩には、大きなたらいを池に浮かべて、その中に乗って、
お月様を眺めながら、朝まで楽しんでいたと言います。
なんとも大自然に溶け込んだ良い境涯でありましょう。