老師 コーネル大学生との問答⑥
横田南嶺老師とコーネル大学生との問答の第6弾です。
学生: 今、私は、学生で自分の生活自立に向けていろいろな勉強をしていますが、
将来、必ず何らかの仕事に就かなければなりません。将来、仕事を選ぶに
あたって、高潔で倫理正しい仕事をしたいと思っています。
2つ質問があります。一つは、高潔な仕事は、どうやって選べばよいでしょうか?
もう一つは、禅の観点から、みんなの為、公益となる仕事とは何でしょうか?
老師: 高潔な仕事をどう選ぶかね・・・。なるほど、高潔だと思うことだな。
ただ、これが難しくてね。世の中、本当に高潔というものがあるかという
問題がある。高潔のように見えると必ず何らかの欠点があるし、欠点だらけの
ように見えて、何か高潔であったり。
私のわずかな経験から言うと、あまり高潔そうに見える場合は、気をつけた方がよい。
人間は、必ず、欠点やほころびがある。それを完全に隠そうとしているよりも
ちらほらと見えた方が安心感があると思います。
それから、公共の為も同じ理論でね。完全に公共というのは難しい。
特に外面を公共の為、みんなの為という言葉で飾っている場合は、あやしい。
それというのも、人間には、どうしても避けがたい自我意識というものがあるから
しょうがない。だから、本当にきれいなものは、少し薄汚れているという東洋の言葉
がある。
そんな中で模索をしていくしかないね。そして、試行錯誤を繰り返すうちに後になって
高潔と言われる人になるのじゃないかな。高潔だけでは、高潔にならない。
いろいろな泥水につかって、嫌な思いをしながら、キラッと光るものが出てくるのだろうね。
(平成30年6月17日 コーネル大学生との質疑応答より)