一日一語 80
顔淵・季路侍(じ)す。子(し)のたまわく、なんぞ各(おのおの)
なんじが志(こころざし)を言わざる。子路いわく、願わくは車馬衣軽裘、
朋友と共にし、これを敝(やぶ)りて、憾(うら)みなけん。
顔淵いわく、願わくは善に伐(ほこ)ることなく、労を施すことなけん。
子路いわく、願わくは子(し)の志を聞かん。
子(し)のたまわく、老者はこれを安んじ、朋友はこれを信じ、
少者はこれを懐(なつ)けん。
『新釈論語』(講談社文庫) 穂積重遠先生 意訳
顔淵と季路(子路)とが孔子様のお側に侍していたとき、
孔子様が「どうだ、お前たちのめいめいの志を言ってみないか。」と
言われた。すると子路が、「車でも馬でも上等の上衣(うわぎ)でも
軽い毛皮の外套でも、友人に融通して破り棄てても惜しがらぬように、
どうかなりたいものと思います。」と言った。
すると顔淵が言うよう、「善事をしても自慢せず、骨折りを人に
押しつけることのないように、どうかなりたいものと思います。」
そこで子路が、「ひとつ先生のお志をおうかがいたいものであります。」
と言ったので、孔子様がおっしゃるよう、「年寄りを安心させたい。
同輩を信用したい。若い者をなつかせたい。」