一日一語 67
お釈迦様がお亡くなりになるときに、このお弟子の迦葉尊者に言われたという
言葉があるんですね。それはお月様です。お釈迦様はお月様を見なさいと。
人々は、お月様が現れると、お月様が出たと思うと。で、お月様が沈んで
しまうと、お月様が隠れたと思うと。でも、お月様は決してなくなったわけ
ではないと。これは分かりますね、新月の晩、これはお月様は見えません。
あるいは、お月様が出ていたとしても、雲が出ていればこちらからは見えません。
でも、お月様は決してなくなったわけではありません。それと同じで、
亡くなった方も、こちらからは見ることができないからといって、
決していなくなったわけではないと、そういうことがいえると思います。
その辺を仏教詩人の坂村真民先生は、昼の月、という詩で表現して
くれております。
「昼の月を見ると母を思う
こちらが忘れていても
ちゃんと見守って下さる
母を思う
かすかであるがゆえに
かえってこころにしみる
昼の月よ」
(坂村真民全詩集第2巻より)
昼間でもお月様は出ているんですね。こちらからは見ることは出来ません。
こちらは、昼間は仕事で忙しいだ何だって忘れています。でも昼の月が
ずっとこちらを見てくれているように、亡くなった方は、私たちのことを
ずっと見守ってくれているんだという、こういうこころでございますね。
{月桂寺発行冊子 『横田南嶺老大師御法話』より}