涼しい風
-山門と紅葉-
臘八大攝心 最終日
横田南嶺老師が僧堂攝心で提唱されたことをまとめてみました。
「相送って門に当たっては脩竹あり 君が為に葉葉清風を起こす」という言葉は
禅の世界ではよく出てきます。
道元禅師も本来の面目、本来の自分と題して
「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり」という歌を詠んでいます。
この歌の最後の「すずしかりけり」が素晴らしいといわれたのが坂村真民先生です。
真民先生の詩にはこの涼しさを詠っている詩がいくつかあります。
{仏教は涼しい風である
涼しい人 それが 仏身である}
良寛さんの詩は涼しい 一遍さんの念仏のすずしい
西行も芭蕉も きれをもっている
私もこの涼しさが好きである。
真民先生には「涼しい風」に関してこういう逸話があります。真民先生は40代の頃、四国・宇和島の大乗寺に
毎朝、坐禅に通われていた。たまたま、そこにアメリカの青年が来た。真民先生は「どうして
こんな四国の片田舎にアメリカの青年が禅をやるためにやって来たのか」と不思議に思って
いた。
ある時に地元の宇和島城を案内していたら、城に上る途中にあった竹林のとこで
その青年が立ち止まってじっと竹を見ている。そして真民先生の方に振り返って
何を言い出すのかと思ったら「これがわかるか?」と言った。
するとその竹林から涼しい風が吹いてきた。そして、その青年は「この風が禅だ」と
言いいました。真民先生はびっくりしてこんな青年はもう日本をさがしてもどこにも
いないだろう、アメリカの青年だからわかるまいと決めつけてはいけないと反省
させられたそうです。
もう一つ、真民先生には「涼しい風」に関して忘れられない話があります。
戦後間もないたいへんな時代に真民先生家族は四国に移ることとになってはじめて
真民先生のお母さんを九州から連れて行くことになりました。四国渡る船は小さな
木の船で夜通し揺れている。真民先生の3ヶ月の赤ん坊は泣いてまわりの人からは
うるさいと責められて夜一睡もできない。
ようやく四国の港に着いて、普通ならこれだけたいへんな思いをしたのだから
えらい目にあったとかと愚痴の一つもでるところ、真民先生のお母さんは一言
「御大師さんの国の風は涼しいね」と言われたのです。
この涼しさが禅であり仏であります。真民先生の詩の大きな柱の一つになっている
ものであります。
(後記)
明日は、成道会(お釈迦様がお悟りを開かれた日)です。
円覚寺では、午前10時から仏殿に於きまして
円覚寺派管長 横田南嶺老師をはじめ和尚様、臘八大攝心を終えた雲水さんが
出席をされて盛大な儀式が行われます。どなたでもご自由の拝見することができます。
皆様のご来山をお待ちしております。