ナマケモノ的生き方
10月23日(日)攝心中日
管長様が僧堂攝心で提唱されたことをまとめてみました。
ナマケモノという動物がいます。人間が勝手に「怠け者」という名前を
つけましたが、ナマケモノにしてみれば怠けているつもりはさらさらないと
思います。世の中をみる、人間をみる、社会をみる、仏法の世界を学んでいく
場合に大切なことは、一つの価値観に執着せずに、いろんなものの見方
いろいろな価値観、尺度を持っていることであります。
生存競争、弱肉強食、自然淘汰などのそういう価値観からでは
このナマケモノという生き物は推し量ることができません。ナマケモノは
実に不思議な生き物で、何をしているかというと別段何をしているわけでも
ありません。1日に20時間以上寝ていて、起きて何をするのかというと
同じ木の葉っぱをほんの2~3枚食べるだけで、あとは木にぶら下がって
じっとしている。
それでは、生存競争の激しいジャングルであのナマケモノがどうして
生きているのでしょうか?当然何もしないでぼやっとしていれば獲って
食われるのが森の世界であります。
食べてもまずい、ろくに動かないから肉がついていないなど諸説
ありますが、一つの真理として「争わないものは攻められない。」
「戦わないものは攻められることはない。」という森の法則があります。
戦わない!争わない!という生き方をあのナマケモノが選んだのでしょう。
我々人間といものはいろんな文明・文化を生み出し、なんだか偉そうにして
そういう価値観で「あんなナマケモノは全くの役立たずだ。」と見ていますが
時には長い長い大きな目で見れば、我々人間のものの見方がいかに狭いもの
小さいものかわかるはずです。地球上にはかつて恐竜やマンモスなど様々な
生き物があらわれては滅んでいきました。無常の法則ですから、いつかは人間の
時代も終わることがありましょう。遠い将来、地球の歴史を振り返ったとき
「あの人間という生き物は何をしたのか?」という議論になったとき、私ならば
「たえず殺し合いを繰り返し、そしてこの地球をこれだけ汚したのが人間であります。」
言わざるを得ません。今のままではそうなりかねません。
そこへいくとナマケモノはどうですか?別段人間から見れば怠け者かもしれませんが
大地を何一つ汚すことなくその中で暮らしています。そういう目から見たら、
ひょっとして、ナマケモノの方が立派な生き方をしているのかもしれません。