今日の言葉
夢窓国師の教え
夢窓国師は、お寺の住職には三つのつとめがあると説かれました。
第一は、説法です。お寺では、お釈迦様の教えを説いて伝えることが一番大切であります。
次には、多くの人を集めること。
自然と多くの人が集まってくるようなお寺にすることは大切であります。
それから、伽藍やお庭など境致を整えること。
お参りした方が、自然と心のやすらぎを感じるようなたたずまいを保つことが大切であります。
そして、夢窓国師は、この三つをよく備えていたと言われます。
しかしながら、今日の臨済宗では、夢窓国師の教えを強調されることはあまりございません。
むしろ、何も語らず、黙っていることを美徳としたり、逆に布教熱心な和尚を敬遠したり、また人集めをするようなのことは世俗的だと言われることもあります。
夢窓国師も五十一歳で南禅寺にお入りになるまでは、ひたすら世間を避けて山中の暮らしを望まれていました。
しかし、その後半生は、鎌倉や京都を行き来しながら、多くの人に教えを説き、立派なお寺を建て、そこに多くの人を集めて善きご縁を結ぶように活動されました。
これは、臨済禅師の
「誰も寄りつかない山の頂上にいるのではなく、多くの人が往来する町の中で教えを説く」
という教えを受け継いでいます。
今の時代なればなおのこと、教えを説くこと、多くの人が集まるような寺にすること、そして境致を整えることの三つを大切にしてお勤めしなければなりません。
(円覚寺派寺院の晋山式での言葉)
横田南嶺