舍利講式
円覚寺には、国宝舎利殿がございます。
舎利殿ですから、お舍利をお祀りしているお堂であります。
舎利殿にお祀りしているお舍利は、
鎌倉時代に源実朝公が、中国に使者を遣わせて能仁寺からいただいてきたという、
お釈迦様の上頷右牙の舍利、
すなわち右上の歯であります。
このお舍利を年に一度ご開帳するのが、十月十五日の舍利講式であります。
大方丈のご本尊釈迦如来に、その日だけは、お蔵にお移りいただいて、
ご本尊をお祀りしているところに、仏舎利をお祀りいたします。
そして、延々と儀式を行います。
一山の僧侶が何度も何度も礼拝を繰り返し、
お舍利の功徳を讃えてお経を読むのであります。
お昼前には、法話を行って、そのあとご参詣の皆様で、それぞれ手から手へと仏舎利へのお供え物を手渡して、
最後にお香を焚いて舍利真前にお供えするという儀式がございます。
そのあとに、大施餓鬼会を行って、各家のご先祖のご回向を勤めています。
お釈迦様の滅後に舍利を供養することは、
肉親のお釈迦様にめぐり会うのと同じ功徳があるのだと経文には説かれています。
法話では、いつもの通り皆様と手を合わせて、今日のめぐりあいに感謝をして始めました。
いつも、両親のおかげでこの命を賜ったこと、
今日まで多くの方々のお世話になってきたことなどを感謝するのですが、
今日台風が来なかったこと、災害の無い事にも感謝をすることが大事だとお話しました。
報道では、各地で大変な台風の被害であります。
お亡くなりになった方も多くございます。
まだ行方不明で捜索中の方もいらっしゃいます。
そんな事を思うと、年に一度の年中行事ではありますが、
いつもと変わりなくお勤めすることができたのは、何にもまして有り難いことであります。
横田南嶺