羅漢講式
十月十四日は、羅漢講式。
明くる十五日は舍利講式という、円覚寺の大事な儀式であります。
円覚寺には、五百羅漢と十六羅漢の軸が伝わっています。
五百羅漢図は、五十幅あります。一幅に十人の羅漢さんが描かれていて、
五十幅で五百羅漢となります。
五百羅漢図と十六羅漢図を、大方丈に掲げて、
一山の僧侶が出頭して、羅漢尊者を一体ずつ礼拝してはお招きします。
そして羅漢さまの功徳を讃嘆するのです。
羅漢とは、阿羅漢とも申します。
阿羅漢は、サンスクリット語arhanの音を写した言葉です、音写と申します。
漢訳では「応供(おうぐ)」といって、尊敬され、施しを受けるに値する聖者(しょうじゃ)をいいます。
インドにおいては、尊敬されるべき修行者をさしました。
仏教では、修行者が到達できる最高の位を表しました。
仏道を学び、そして完成し、もはやそれ以上に学ぶ要がないので、無学という位でもあります。
仏さまの称号の中にも、「応供」の名があり、
もとは仏様の別称でもありましたが、後には弟子の称号となりました。
特に中国や日本においては仏法を護持することを誓った十六人の弟子を十六羅漢と呼びました。
また、第一 回の仏典結集(けつじゅう)に集まった五百 人の弟子を五百羅漢と呼んでいます。
禅宗では、お釈迦様の法を継いだ迦葉尊者が阿羅漢であったので、
羅漢を修行僧の理想として尊びました。
今日の時代ですので、羅漢尊者のような厳しい修行もできていないのですが、
せめて理想を忘れてはならないと、礼拝を繰り返しています。
とりわけ、私如きは、羅漢どころか、何もしない「はたらかん」であります。
慚愧懺悔で礼拝しています。
十五日は、円覚寺に伝わる仏舎利を一年に一度ご開帳する儀式が行われます。
横田南嶺