今日の言葉
莫煩悩(まくぼんのう)の語
開山忌などの法要には必ず七言絶句の偈を唱えます。
訓読しますと
龍淵を激起す、無学翁
莫煩悩の語、威風を動ず
海虜百万、咸(ことごと)く掃蕩(そうとう)し
長(とこ)しえに憶う、国師蓋代の功
およそ意訳しますと
無学祖元禅師(仏光国師)は、佛鑑禅師の教えを学んで激動の時代を生き抜かれた。
日本の国に招かれて、北条時宗公に与えた
「莫煩悩」の一語は、時宗公の心にもよく響いた。
おかげで、海を渡って来た敵もみな追い払ってしまうことができた。
仏光国師の功績は何代にもわたって伝えられ、長く忘れることなく思い起こす。
仏光国師は、南宋に生を享て、径山の佛鑑禅師のもとで修行し
その後各地の禅僧について修行を重ねられ
何事も無ければ、そのまま南宋の禅界の中心人物となったでしょう。
しかし、元の国が攻めて来て
自らも刃を突き付けられるという危機にもあい、
南宋の滅亡と同時に
言葉も通じない日本に見えたのでした。
時の執権北条時宗は仏光国師に熱心に参禅されました。
「莫煩悩」の一語は、弘安の役の年の春に
仏光国師が時宗公に与えた一語でした。
夏には、博多で再び戦乱が起こるであろうことを予見し
「海虜百万、鎮西に寇す。風浪俄に来たって一時に破没す」
(海から百万の敵が九州を襲うだろうが 風浪がにわかに起こって一時に没するだろう)
という言葉を与えられました。
どんなにか若き時宗公の支えになったことでしょう。
時宗公三十一歳でした。
横田南嶺