ぶどうの話
雲水から聞いたぶどうの話です。
ぶどうは、つる性の植物で
ほっておけば枝葉は大きく広がり
数年で三階建てのビルを越えるほど大きくなる。
広がった枝葉にはたくさんの房がなり
一本の樹から百房以上もなることもある。
ただしそのような樹は、環境の変化に弱く
少しの日照りで枯れたり
雨が続くと病気になったりし
樹齢も四十年を越えることはないという。
収穫した実でワインを作って、深い味わいにならない。
その一方で、盆栽なみに手をかけて育て
きちんと剪定し
制限して育てたぶどうの樹は
いつしか枝葉を伸ばすのをやめて
活力のほとんどが根に向かう。
根が地下百メートル近く伸びることもあり
干ばつがあっても枯れることはなく
樹齢も百年を超えることも珍しくないという。
できる房も、数十房と多くはないものの
実は凝縮した味わいがあり、芳醇なワインになるという。
そんな話を聞いて
我々も枝葉を伸ばすことばかり考えていると
環境の変化に耐えられないのではないかと思いました。
寺離れと言われるので
何とかお寺に人が来るようにしよう、
やさしい坐禅会をして人を増やそう、
そんなことばかり考えていると
やがて大きな風が吹くと倒れてしまうでしょう。
やはり、根を掘り下げる努力を怠ってはいけないと
思います。
そんなわけで、29日と30日の
両日は、湯島の麟祥院にこもって
平林寺、相国寺、大乗寺、円福寺の老師方
駒澤大学の小川隆先生、
曹洞宗の藤田一照先生たちと共に
臨済録を学び直し、坐禅の修行を深め合う時を
持つことにしています。
横田南嶺