「言葉を贈る」
『孔子世家』に「富貴なる者は人を送るに財を以てし、仁人は人を送るに言を以てす」
という言葉があります。
財のある人は、人を送別するときには、はなむけとして金銭を贈るが、
仁徳の人は、よい言葉を贈るという意味です。
孔子が老子を訪ねたとき、帰りぎわに老子から贈られた言葉です。
その時に、老子は孔子に対して、聰明で深い洞察力を持っていても、
他人を非難していると命が危ういこと、博学で弁舌すぐれ、たとい見識が広くても、
他人の悪をあばいていると、身を危うくすることを説いたそうです。
孔子に対する箴言です。
月船禅師の『武渓集』には、月船のもとで修行して旅立ってゆく修行僧達を送った偈が
たくさん収録されています。ざっと数えても三十はあります。一人一人の修行僧に、
漢詩を作って贈られた月船禅師の、情愛の深さに感服します。
(平成31年1月 横田南嶺老師 制末大攝心提唱より)