月桂寺イス坐禅
今年は、お寺でのイス坐禅の会も何回か企画しています。
前回は、六月に谷中の霊梅院で開催しました。
今回はお寺でイス坐禅の二回目で、新宿の月桂寺で開催しました。
都内の会議室で行うイス坐禅という、こんな催しにも関心を持ってくださる和尚様がいらっしゃるのです。
霊梅院の柳和尚も、会議室のイス坐禅によく通ってくれていました。
今回会場をお借りした月桂寺の熊谷一路老師も、会議室でのイス坐禅によく通ってくださっているのです。
そこで今回月桂寺様でのイス坐禅の会となったのでした。
月桂寺は円覚寺派の中でも特例地といって、三か寺しかない由緒のあるお寺であります。
このお寺の前の前のご住職である松尾太年老師は、朝比奈宗源老師のあとに円覚寺の管長にもなられています。
円覚寺の管長となる資格を持つ方が住職を務めるという、特別なお寺なのであります。
月桂寺は寛永九年(一六三二)に、関叔禅師を開山として創建されたお寺です。
元禄時代には、柳沢吉保が檀越となっています。
柳澤家代々のお墓もあるお寺であります。
関東十刹といって、関東を代表する十のお寺のうちのひとつでもあります。
それほどの由緒あるお寺の老師が、熊谷老師であります。
八月八日の土曜日に開催しましたので、暑い日でありました。
いつもイス坐禅の会では、だいたい何をしようかと考えているのですが、その場になって、皆の様子や雰囲気を見ていろいろ工夫しています。
今回もまず目をゆるませることから始めました。
皆さんは外の強い直射日光を浴びて寺に来られたわけですし、多くの方にとってはじめて来るお寺ですので、どこにあるのか、目であれこれ探して来られたと思いました。
今イスに坐っていても初めての場所なので、目が緊張しています。
そこで両目を両手で覆って、少し天井の方を見上げるようにして目をゆるませました。
そのあとまだ目を閉じたままで、イスに坐って両腕を前後に振る運動をしばし行いました。
目を閉じていると身体に意識がゆきます。
前後に腕を振ることによって、自然と身体の軸が調ってきます。
しばしこれを行って目を開けてもらいました。
これだけでかなり身体が調っているのが感じられました。
もうこれで坐っても良いくらいだと思いました。
いつも参加してくださる方からは、その日は体調がすぐれなかったそうですが、最初に目を休めて腕を前後に振るだけですっかり落ち着きどころを取り戻すことができたと言ってくださいました。
それから直径二十数センチのバランスボールを使って、足を調えてゆきました。
このやわらかいバランスボールを使うと、身体をよく調えることができます。
はじめに片足をやわらかいボールの上に置いてもらって立つだけを行ってもらいます。
右足をボールに置いていると、ボールは不安定なので、足でたえずバランスを取ろうとします。
これで足の裏が活性化します。
しばらくしてボールを外して立つと、右足の裏がとてもよく感じられるようになっています。
左右の足を行うとどっしりと足を感じて安定するのです。
足の裏が安定するというのは、イス坐禅でとても重要です。
足が地についてはじめて落ちつきます。
身体が安定して落ちついてこそ、呼吸や心も調うものです。
それからボールを使って足首を回しました。
そしてさらに肋骨まわりをゆるめる動きを行いました。
ボールを膝の間に挟んで内転筋を鍛える動きも行いました。
坐って足を持ち上げて、腸腰筋を働かせることも行います。
そして股関節の引き込みも何度も行いました。
そうして坐るようにしました。
長く坐っていて腰が張ったり、腰が痛くなったりする一つの原因は、背筋だけを使って腰を立てようとして、腰が反らし気味になることにあるように思います。
脊柱起立筋などの背筋も大事なのですが、それだけに頼るのではなく、内転筋や腸腰筋なども働かせて、骨盤と股関節を安定させ、その上に背骨が無理なく立つようにします。
そうして股関節に身体を乗せるようにすると、背骨をバランスよく立てることができます。
とても無理なく安定するのです。
安定すると余計な力みが抜けてゆきます。
呼吸も穏やかに調ってきます。
そうしてしばし坐りました。
後半の坐禅では、軟酥の法を実習しました。
頭の上に軟酥を置くように意識するのですが、実際にボールを置いてみると、より一層分かりやすいと思ったのでした。
参加者からは「頭に置いたボールのおかげで、お薬バターの流れをいつもより濃密に感じることができ、身体の中に力がみなぎってくるのを感じました」という感想もいただきました。
とてもよく調うことができました。
私もこの身体が空中にとけ込んでいくような至福のひとときを味わうことができました。
令和八年八月八日と、八の字が並びますので、お寺で御朱印を求める人も多い日らしく、いつも参加されるホトカミの吉田亮さんもその日はとても忙しかったようです。
いつものようにイス坐禅に参加された感想をnoteに書いてくださっていますが、朝からパソコンとAIとつきっきりだったようです。
気がついたらお昼になっていてあわてて駆けつけたそうです。
いろんな人を拝見していると、その日の身体の様子がこちらにも伝わってくるものです。
吉田さんはnoteに「この一週間は寝る直前までパソコン、起きてすぐパソコンだったので、脳みそとパソコンが常に繋がっている感覚」だったと書かれていますので、たいへんだったのでしょう。
頭の方がいっぱいいっぱいになっている様子が、見ていてもうかがえました。
それでも二時間のイス坐禅を体験していただいて、「終わったら、頭も空っぽになって、とてもスッキリしていました。身体も全身がほぐれて、とても元気です。身体が軽いです。
これがデジタルデトックスか!と初めて体験した気がしました。」という感想を書かれていました。
これまた有り難いことであります。
お寺でのイス坐禅は、やはりお寺という環境そのものがよく、ご本尊様の前で行うこともあって、心身がとてもよく調うのを感じることができました。
横田南嶺