平和を作りあげる
またお盆でもあります。
戦争が終わって八十一年となります。
「戦争を知らない子供たち」という歌が歌われたのは、一九七〇年のことであります。
戦争が終わって 僕らは生まれた
戦争を知らずに 僕らは育った
という言葉から始まります。
戦争を知らずに生まれ育った世代の思いを歌った歌でもありました。
私などには、心に少し負い目を感じるものでした。
しかし、戦後八十一年となると、今では戦後生まれの人が人口全体のおよそ九割を占めるまでになっています。
戦争を知らずに育った人がほとんどとなっているのです。
さて、先日の日曜説教は、諸行無常と題して話しました。
日曜説教の法話を考えるのは毎回いろいろと工夫をしています。
毎月お聞きくださる方が多いので、毎回新たに考えます。
法話で大事なのはなんといっても構成であります。
どのような構成にするかで、ほぼ決まります。
構成さえ決まれば、あとは肉付けをして原稿を書くのです。
原稿を書けば、どれだけの分量の原稿でどれくらいの時間で終わるかは、長年の経験でじゅうぶん分かっています。
それだけに、構成を練るには毎回工夫させてもらっています。
日曜説教が終わると、すぐに次の日曜説教をどうするか考え始めるのですが、今回はギリギリまで構成を工夫していました。
まずは、熊本の地震の話から始めました。
起承転結でいえば、「起」であります。
そこから森信三先生の「釈尊の説かれた「無常」の真理とは、「この世ではいつ何が起こるか分からぬ」―ということです。それ故われわれは、常にこの「無常」の大法を心して、いつ何が起ころうと驚かぬように心しなければならぬ。」という言葉を引用して、「諸行無常」の話へと展開しました。
起承転結の「承」であります。
そこで諸行無常の「行」という言葉の意味について考察して、無常とは単に地震や災害が起きて、大きな変化があることだけではないことを話しました。
行は、作られたものでありますが、作りあげるという意味もあります。
般若心経に「五蘊」という言葉が出てきますが、その五蘊の「色受想行識」の「行」でもあります。
五蘊の説明もここでしておきました。
五蘊を簡単に整理すると、
色蘊は、感覚器官をそなえた身体であり、ひろく物質全般をいいます。
受蘊は、心地よいか、不快か、どちらでもないか、という感受作用です。
想蘊は、対象を認識し、特徴づける働きです。
行蘊は、意志、欲求、習慣、判断、心の方向づけなど、心を形成していくはたらきをいいます。
最後の識蘊は、対象を識別して知る意識を言います。
行には、ものごとを形成していくはたらきという大事な意味があります。
そんな話をしておいて、話を大きく展開しました。
ジブリの話へと展開したのです。
作りあげるというと、小説を書いたり、文学作品を作るということも入ります。
まさしく独自の世界を作りあげるのです。
映画もそうであります。
そこでアニメの話にしてジブリの話をしたのでした。
起承転結の「転」であります。
この「転」で大きく展開させることで話をふくらませることができます。
ジブリの世界というのは、まさに作られたものです。
そのジブリの世界を見て、現実の私たちの考えや行動が変わってくるのです。
作られた世界によって、また現実の世界が新たに作られていくのです。
そんな話からさらに、
『法句経』の、
「1、ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。もしも、汚れた心で話したり行ったりするならば、苦しみはその人に付き従う。ー車をひく(牛)の足跡に車輪がついてゆくように。
2、ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。もしも清らかな心で話したり行ったりするならば、福楽はその人に付き従う。ー影がそのからだから離れないように。」
という言葉を紹介してすべては心によって作り出されることを話しました。
そして比叡山の宗教サミットにおける世界仏教徒連盟の会長であるパロップ・ダイアリー氏のメッセージを紹介しました。
これが起承転結の「結」となります。
少し長いのですが、引用します。
「仏教は、生きとし生けるものの心はすべて、深く繋がり合い、互いに依存し合っていると説いております。
人間は、他の生き物とは異なり、物事を判断し、自らの意志で選択する能力を有しています。
すなわち、平和をもたらすのか、争いを生み出すのかは、私たちの決断次第なのです。
穏やかな心は、穏やかな言葉を生み、穏やかな行動を導きます。
私たちが内なる平和を育むとき、それは思考を通して外へと広がり、日々の行いとなって立ち現れます。
さらには、怒りや憎悪、不寛容といった負の感情を捨て去り、思いやり、慈悲、許し、寛容、共存のような清らかな精神を育むことによってのみ、真の平和と調和がもたらされ得ると仏教では教えております。
心を鍛え、倫理に基づく生活を通じて心の内に平和を築くことが、この広い世界に恒久平和をもたらす礎となるのです。」
という言葉です。
まさに平和な世の中も、争いの世界もお互いの心が作りあげるのです。
そうして、世の中は無常であり、いつ何が起こるか分からないこと、それでも、どのような世界の中にあっても、人は互いに助け合うことができることをお伝えしました。
相手のことを思いやり、支え合う、その心によって、私たちは新しい世界を作りあげていく力を持っているのです。
戦後八十一年にわたって守られてきた日本の平和も、多くの方の思いと努力によって作られてきたものです。
これを継続する努力を怠ってはいけないと思う日であります。
横田南嶺