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臨済宗大本山 円覚寺

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2026.06.07
今日の言葉

もとより仏

五月の末に、東京大学東洋文化研究所准教授の柳幹康先生にお越しいただいて、修行僧たちの為の講座を開いていただきました。

一時間ずつ二講座をお願いしました。

第一講座は、仏教概論で、境界を超える仏教と題して、第二講は禅宗概論で、仏の自覚と実践という題でありました。

柳先生は花園大学にもお勤めいただいていたことがあります。

今も花園大学国際禅学研究所の副所長でいらっしゃいます。

境界を超えるというのは、はじめに地域文化を超えて仏教が伝わってきたを言います。

そしてもうひとつの境界を超えるというのが、理想と現実という境界を超えたのが禅であるというのです。

現実の自己と理想の仏とのその境界を超えた教えであるというのは、なるほどその通りだと思いました。

はじめに地域文化の境界を超えて伝わってきたことについて学びました。

仏教はインドから始まったものです。

それが紀元前三世紀頃にスリランカに伝わりました。

そしてスリランカら東南アジアに伝わったのであります。

スリランカやタイやミャンマーに伝わっている仏教です。

南方仏教とか南伝仏教とかあるいは上座部仏教と呼ばれています。

それからヒマラヤ山脈を越えてチベット高原に入っていく流れがあります。

チベットに入ってから中国、そして北のモンゴルへと伝わっていく流れです。

これが最終的に一番北まで伝わりましたので北方仏教と言ったりしますし、チベットが中心ですのでチベット仏教などと言ったりします。

それから西域を超えて中国から朝鮮、そして日本へと伝わったのが、東の方に伝わったので東方仏教とか、漢語で伝わっていますので、漢伝仏教と言います。

よく説明されるのは、南伝の仏教と北伝の仏教、あるいは上座部仏教と大乗仏教と二分法ですが、伝承の流れを三つに分けてくださいました。

それがよく分かるのが、使われている文字だというのです、

柳先生は、仏という意味の文字を、梵語のブッダという文字と、チベット語の文字とそして漢字の仏と三つを示してくださいました。

それぞれ文字が異なるのです。

もともとインドのお釈迦様の教えで、早いのが紀元前に南方に伝わり、七世紀頃にチベットに伝わり、一世紀頃に中国に伝わっています。

日本に伝わったのが六世紀です。

柳先生はお釈迦様の話から始めてくださいました。

お釈迦様はガウタマ・シッダールタと申します。

今から2500年頃前に生まれた方であり、釈迦族の王子様でありました。

それが、人が生まれてはやがて老い、病になり死ぬ苦しみを見つめて、その苦しみから脱する方法を求めて二十九歳で出家されました。

難行苦行を経て三十五歳で悟りを開いて仏になりました。

そしてその教えを説かれました。

その教えを聞いた人々が出家し弟子となり教団が成立しました。

この悟った人が仏であり、その説かれた教えが法であり、教えを実践する教団が僧というのです。

ここで仏法僧の三宝が成立しました。

私達が毎日お唱えしているお経に大悲呪というのがあります。

ナムカラタンノートラヤーヤーから始まります。

この「ナム」は帰依することで、ラトナが宝、トラヤーヤーは三つを表します。

この「ナムカラタンノートラヤーヤー」で私は三つの宝をよりどころとしますという意味なのです。

仏とはもともと真理に目覚めた人、悟った人という意味であります。

初期の頃の仏教では人は仏になることはできなくて、阿羅漢になることを目指していました。

この仏と阿羅漢の関係について柳先生は、万有引力を発見したニュートンを譬えに解説してくださいました。

万有引力を発見したのはニュートンで、発見者はニュートンしかいません。

我々はその後、物理として計算式を学んで、それを理解することはできます。

理解をしても、それで発見者だということにはなりません。

初期の仏教における。仏と阿羅漢の関係はそういうものだというのです。

仏は真理を発見した人であり、阿羅漢はその教えを学んで理解した人をいうのです。

時代を経て、仏とは更に神格化してゆきます。

超人的な力を持った存在となってゆきます。

とても我々がなれるものではないと考えられたのでした。

それが大乗仏教になると、仏になれると説くようになりました。

仏になれる、これが大乗仏教の大きな特徴です。

しかし、三阿僧祇劫というとてつもなく長い時間がかかるとされていました。

1.296の十の六九乗という数え切れないほどの長い時間がかかります。

とても生きているあいだに仏になるはずもありません。

それが禅では、なんと「もとより仏だ」と説き始めたのです。

もとより仏であるが、そのことに気がついていないだけだというのです。

迷っている今の状態は無自覚な仏なのだというのです、

それが有自覚な仏になる教えなのです。

これを、姿勢を譬えにして説明してくれていました。

猫背の人が矯正してまっすぐになるとします。

悪い姿勢から新しい姿勢になったとも言えますが、人間は元々まっすぐな良い姿勢なのであり、よい姿勢になったというのは本来の自然な姿勢に戻っただけだとも言えるのです。

もともと仏であるのに、そのことにただ気づいてないだけの状態だというのです。

そこで後半の講義では永明延寿の教えを学びました。

もとより仏であると言われてもわれわれは悟ることができません。

延寿禅師は、それはあなたが「もとより仏である」という事実を見失い、仏らしからぬ不自然なことばかりをしているからだと説かれます。

それではどうしたらよいのか、仏の自覚と実践の方法を説かれました。

それにはまず「心が仏だ」と信じるのです。

そして仏にふさわしい行いをします。

そうしていると確かに「心が仏だ」と実感できます。

しかしまだ悪い癖が残っているので、悪い癖を除く修行を続けます。

そうしていくとあとは自ずと仏の行為をするようになるというのであります。

そのあと大慧禅師や白隠禅師の実践方法について学びました。

お釈迦様の教えから禅宗までの流れを柳先生はわかりやすくパワーポイントを使って解説してくださいました。

修行僧たちも皆とても喜んでいました。

こうして自分たちはどんな修行をしていくのかを理解しておくことも大切であります。

 
横田南嶺

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