ラジオと坐禅
午前十時から正午まで、元NHKエグゼクティブアナウンサーの村上信夫さんとお話させてもらっています。
昨年から行っていて、今年は、第五日曜日の出演とさせてもらっています。
ですから三月の二九日以来であります。
第一日曜日の放送は、第二日曜に再放送、第三日曜の放送は第四日曜に、それぞれ再放送がなされますが、第五日曜日のは再放送がありません。
アーカイブも残りませんし、そのときにしゃべればそれきりであります。
というわけで気楽にお話させてもらっています。
最初の話題は、五月二十八日発売の『週刊新潮』に私の記事が載ったことでした。
二十八日発売の、六月四日号の『週刊新潮』に「私の週間食卓日記」という連載記事に書かせてもらったのでした。
ご縁のある方の紹介で依頼されたのでした。
これは一週間の食事と日常の様子を書いたものです。
ちょうど依頼された時は四月の摂心という修行の期間でしたので、修行期間の食事について書いたのでした。
毎朝起床は午前三時で、まずチベット式の五体投地を百八回行います。
その他に腕立て伏せを百回と、真向法を行っています。
チベット式五体投地のイラストも描いてくださっています。
摂心の間は外に出かけることもなく、坐禅と禅問答をして過ごしますので、あまり食事を取りません。
朝も食べないことが多く、お昼に軽い食事をするくらいです。
坐っていることが多いので、そんなに食事はいりません。
また一週間のうちで一日は断食にしていて、なにも食べないのです。
これは別に修行として行っているものではなく、体をととのえるためであります。
記事のなかにも「人間というものを動物として見たときには、自然界の中では極めて弱い存在でした。毎日必ず食事にありつける保証もなかったと思います。ときには食べるものがなく、空腹であることもあったと思うのです。そんな考えから、月に一度くらい一日食事をしない日を作っています。
お昼頃にはお腹が空いたと感じますが、もう慣れたものです。じっとしているか、なにか簡単な作業をしていると自然と空腹感も薄らぎます。
空腹な状態で坐禅をするのはいいことです。身心ともに澄み渡る気がします。」
と書いています。
この連載は、私のときで一四一六回ですから、長く続いているものです。
一週間の食事を書いて、終わりに管理栄養士の方が「アドバイス」と採点をしてくださるのです。
他の方の時には、何点と点数が書かれているのですが、私の場合は、採点不能となっていました。
もっともこの記事の終わりに「お寺にいるときはだいたいこのような暮らしであります。これでは栄養が足りないと思われるかも知れません。
修行の期間でないときには、外にでかけることも多いのです。円覚寺の管長を務めるほかに、京都の花園大学の総長や禅文化研究所の所長も兼ねています。出張する時は外食もしますし、何でも有り難くいただいています。それでどうにか栄養も補完されているのではないかと思います。」と書いておきました。
たまには外でご馳走をいただくこともあります。
そんな時には何でも出していただいたものは有り難くいただいているのです。
そんな週刊誌の話から始まって、最近のクマの話題にちなんで短い法話をしました。
そのあと禅語では、「岸に懸って花、倒しまに生ず(岸懸花倒生)」という言葉を取り上げて、最近崖の伐採を行った話をしました。
崖の桜の木も伐られたのは残念だったという話と、松原泰道先生から教わった
あれをみよ みやまのさくら咲きにけり まごころ尽くせ人知らずとも
という和歌も紹介しました。
終わりの方に坂村真民先生の詩を朗読します。
あじさいの季節になったので、あじさいの詩を紹介しました。
あじさいの花
まるくまるく
形のよいものに
なろうとする
やさしい心の
あじさいの花
きのうよりも
きょうと
新しい色に
なろうとする
雨の日の
あじさいの花
ほかにも三つほど真民詩を詠みました。
その日の午後は、白明という発酵食品のお店で八名の坐禅会を行いました。
八名だけで坐禅をするのです。
小人数で行う会というのはよいものです。
二十代の青年から六十代の方まで八名の方と坐禅をしました。
二時間ほど体をほぐしながら無理のないように皆さんと坐りました。
その時に気をつけたのは、坐布というお尻の下にあてるものです。
普通はお寺などで用意された坐布に自分が坐るのです。
坐布に合わせて自分が坐ることになります。
しかし、坐る人の体型や、体の硬さなどは様々なのです。
坐布は四種類を持ってゆきました。
四角で薄めの坐布と、丸いクッションのようなボールと、ヨガブロックと、そして丸い高めの坐布であります。
それぞれそ四つに坐ってもらってどれが自分の体に合うのかを試してもらいました。
初めて坐禅するという方もいらっしゃったので、その坐布に注意したのでした。
足の硬い方だと、ヨガブロックに薄い四角の坐布を乗せて、その上に坐ると、自然と骨盤が立つ姿勢になりました。
なかなか大勢の坐禅会ですと、そこまで丁寧にはできないのですが、小人数だからこそ、その人に合った坐布を選ぶことができました。
お尻の高さというのは重要です。
慣れてくると、どんな坐布であろうと坐れるようになりますが、初めての内にはこの高さは大事であります。
という次第で、午前中はラジオで午後は坐禅をさせてもらったのでした。
横田南嶺