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臨済宗大本山 円覚寺

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2023.10.07
今日の言葉

信心の力

信じることは大きな力になります。

そんなことをつくづくと感じることがありました。

諏訪中央病院に行って帰った翌日、今度は岩手県の花巻まで出かけていました。

岩手県の遠野にあるお寺で、新しい住職が就任する儀式、晋山式に招かれて行ってきたのでした。

もう十年程前、はるばる岩手の遠野から修行僧が来てくれたのでした。

花園大学を卒業した修行僧でありました。

まだその頃は私も花園大学の総長ではありませんでしたが、わざわざ鎌倉まで修行に来てくれていたのでした。

話を聞いてみると、師匠であるお寺のご住職は、若くして病に倒れて、お体がご不自由だというのであります。

それで、その修行僧は、幼い頃からお父さんを助けてお寺のお手伝いを一生懸命に努めてきたのでした。

臨済宗では、お寺の住職になるには、修行道場に入らないといけません。

それも三年は修行しないといけないのであります。

三年円覚寺で修行して遠野のお寺に帰っていったのでした。

純朴で実直で親孝行で、こういう青年がどういうところで生まれ育ったのだろうかと気になっていました。

それが昨年、この晋山式に来て欲しいという依頼があったのでした。

こういう儀式を行うには何年も前から支度をするのであります。

今回も五年がかりで計画を立てて来たというのであります。

お招きいただくからにはうかがわないといけませんが、晋山式は九月三十日だというのです。

円覚寺では、十月三日が開山忌といって、一年でもっとも大切な、もっとも大がかりな儀式がある時です。

実際には、九月の末から準備や儀式の稽古などが始まっています。

なかなか出かけにくい時なのですが、なんとか行かなければという思いで、どうにか日程を調整して出かけたのでした。

まず日帰りは無理だと分りましたので、前日の夕刻花巻駅まで行って、駅前に泊まることにしました。

晋山式の当日は、午前十時から儀式が始まりましたので、八時半にホテルを出てお寺に向かいました。

九時過ぎに着いて、十二時頃までわずかの滞在でありましたが、無事に勤めを果たすことができました。

晋山式ですから、主役は新しい住職であります。

新命和尚と言います。

寺の外に控えていて、行列を組んでお寺に向かいます。

お寺の門のところで、地元の和尚様が待ち構えていて、「一句無くんばこの門を通さず」と言います。

禅の教えについて一句言わないと門を通さないというのです。

そこで、自ら修行して得た心境を漢詩に託して唱えます。

その漢詩を聞いて門を通ることを許すのです。

形式的といえばそうなのですが、それでも本人はもとより聞いている方にも緊張感が走ります。

無事に門をくぐって本堂にあがるのです。

本堂には、地元の和尚様方やお寺の総代さんや役員さん、ご親族の方々が整列して出迎えます。

私もその先頭に坐っているのであります。

私の役目は、この晋山式が無事に行われることを見届けることであります。

紫の法衣を着て、曲ロクという特別なイスに座ってただ見つめています。

晋山式に、新命和尚が修行した道場の老師に参列してもらうことは大切なことなのであります。

新命和尚も紫の法衣に、金襴のお袈裟を掛けて本堂に入って、皆の前で、堂々と漢詩を唱えていました。

晋山の偈というのを自分で作って唱えるのであります。

そういう姿を見ていると、修行道場に入りたての頃の姿を思い起すのであります。

あれから十年随分と立派になったと感慨にふけっていました。

私は修行に来てからのご縁ですが、ご家族や檀家の総代さんたちにとっては、実に感慨無量だったと察します。

うかがうと、当時の住職は既に病に倒れてから今の新命和尚が生まれたそうなのです。

ご住職はご不自由なお体ながらも、奥様や家族の支えもあって、今日までお寺を守ってこられたのであります。

どんな思いで今ここに坐っているのかと思っていました。

一通りの儀式が終わって私が一言述べることになっています。

これが御垂訓といって、訓示を垂れることになっています。

訓示と言いましてもお祝いの言葉を述べるのであります。

その日は少しひんやりするぐらいの秋の爽やかな日でありました。

秋の澄んだ風が吹いていました。

そのお寺のすぐそばには、不動巌と巌龍神社という素晴らしい名勝がございます。

実に聖地という趣のあるお寺でありましたので、この素晴らしい気に満ちたお寺で無事に晋山式が行われましたことをお祝い申し上げますとまず述べました。

それから、この大きな儀式を挙げるにあたって、何年も前から計画し会議を重ねて支度をしてくださった、和尚様方や総代さん役員さんたちにねぎらいの言葉を申し上げました。

そして、この日を最も待ちわびていたお寺のご住職と奥様に心から敬意を表しますと伝えたのでした。

長い間お寺を守ってこられて、ようやく新しい住職に譲ることができたのです。

住職は三十三才になっていました。

三十三年かけて住職を育てあげたのですからたいへんなご功績であります。

この頃は、円覚寺派でも晋山式を行うことは少なくなっています。

いろんな事情があってのことだと思います。

しかし、この遠野という地にあって、地元の檀家さんたちが、新しい住職の為に晋山式を行おうと一致団結してとりくんでおられるお姿には深く感銘を受けました。

更に祝賀会が行われてそこでも一言挨拶をしましたので、私は儀式の大切さと人が集うことの意義について話をしました。

コロナ禍という三年少々の時期を乗り越えて祝賀会も無事に行うことができたのです。

今までは儀式が出来ない、みんなで集まれないと時期を過ごして来ました。

改めて儀式の大切さ、みんなが集まってひとつになって行うことの素晴らしさを実感しますと伝えました。

若い和尚がいて、それを支える信者さんたちがいてお寺を守ろうという姿は実に尊いものであります。

信心の賜物であります。

お集まりの皆さんは、長い間、お寺に生をうけたこの子がきっと修行して住職になってお寺を守ってくれると信じてこられたのでした。

信心の力を改めて思いました

今は人口減少や少子化、過疎化などいろんな問題がありますが、若い住職と住職を信じて支える方々がいればきっとだいじょうぶだと思って、岩手から帰って来たのでした。

結局そのお寺に行って帰るだけで、遠野も花巻もなんの観光もできなかったのですが、無事勤めを果たせただけで満足でありました。

 
横田南嶺

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